相続人に行方不明者がいる場合の遺産分割協議は?失踪宣告や不在者財産管理人について解説!

今回は、相続手続きを進めようとした際に、相続人の中に行方不明者がいる場合の手続きについて解説します。

 

想定事例~行方不明の相続人と失踪宣告又は不在者財産管理人の選任~

Q:Aと申します。現在、私が一人で住んでいる自宅が、20年前に亡くなった夫の名義のままなので、私の名義に変えておきたいのでお願いします。

私と夫の間に子供はおらず、親も曽祖父母も他界しています。ですので、相続人は夫の兄弟になると思うのですが、3人いる兄弟のうち1人が10年前から行方不明になっています。

このような状態でも、相続による名義変更はできるのでしょうか?

 

A:亡くなった旦那様の名義の自宅について、Aさん名義に登記を入れようとする場合、相続人全員で遺産分割協議を成立させる必要があります。

しかし、今回、相続人のお一人が行方不明でいらっしゃいます。この場合、2つの方法があります。

1つ目は、行方不明者の生死が分からない場合に、家庭裁判所に失踪宣告を申し立て、行方不明者の死亡を擬制して、その相続人と遺産分割協議をする方法があります。

2つ目は、家庭裁判所に申し立てることによって、行方不明者の不在者財産管理人を選任してもらい、その不在者財産管理人と遺産分割協議をする方法があります。

 

不在者財産管理人を選任する方法だと、30万~100万程度の予納金が発生するでしょう。

また、原則として遺産分割協議の際に不在者の法定相続分の確保を主張されるため、代償金を支払うなどの何らかの手当てをしなければ、Aさんの単独名義に登記を入れることは難しい可能性があります。

一方、失踪宣告については、どこに住んでいるかは分からないが生存していることは分かっている場合は使えませんので、注意が必要です。

 

失踪宣告の制度と申立て手続き

失踪宣告の制度とは

失踪宣告の制度は、行方不明となった者について、その生死が不明である場合に、その行方不明者を法律上死亡したこととするものになります。

管轄の家庭裁判所に申し立てることになるのですが、行方不明者の死亡を擬制するという非常に強い効力がある手続きであるため慎重に審査され、通常、1年程度の期間を要することとなります。

 

今回のように、遺産分割協議をしたいけれども行方不明者がいる場合に、失踪宣告制度を利用すると行方不明者が死亡したこととなり、その相続人と遺産分割協議を行うことができるようになります。

また、行方不明者と婚姻を解消し、再婚をしたい場合などにも利用されます。

 

失踪宣告の要件と効果

失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。

普通失踪の場合は、失踪者の生存が最後に確認された時から7年間、生死が不明であることが要件となります。

この場合の擬制される死亡日は、最後に生存が確認されてから7年間満了の時です。

 

特別失踪とは、戦争、船の沈没、航空機事故、洪水、雪崩などの死亡の原因となる危難に遭遇した場合の制度です。

特別失踪の場合は、戦争がやんだ後、船が沈没した後など、その他の危難が去った後1年間、生死が不明であることが要件となります。

この場合の擬制される死亡日は、危難が去った時となります。

 

失踪宣告の申立て手続き

管轄の裁判所は、不在者の従来の住所地又は所在地を管轄する家庭裁判所になります。

 

申立人となれる者は、不在者の利害関係人です。

この利害関係人というのは、失踪宣告がされたことで法律上の利害関係を有する者を言います。

具体的には、不在者の配偶者、相続人となる人、受遺者、不在者財産管理人などです。

 

申立ての手続きですが、以下の書類を管轄の家庭裁判所に提出して行うこととなります。

・申立書・・・申立ての理由、実情などを記載します。

・上記の申立ての理由、実情について証拠書類があれば添付します

・不在者の戸籍謄本

・不在者の戸籍附票

・不在者の失踪を証する資料・・・警察発行の行方不明者届出受理証明書、返送された郵便物、陳述書などになります

・申立人の利害関係を証する資料・・・戸籍謄本などが該当します

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不在者財産管理人の制度と選任手続き

不在者財産管理人の制度とは

不在者財産管理人の制度は、行方不明となった者のために、申立てにより家庭裁判所が不在者財産管理人を選任して、その財産の管理を行わせるものです。

今回のご相談のケースのように遺産分割協議を行いたいが相続人に行方不明者がいる場合や、公共事業による用地買収の地権者に行方不明者がいる場合、時効取得の相手方が行方不明の場合など、色々なケースで用いられることがあります。

 

通常、上記の失踪宣告制度の方が手続きがシンプルで費用もかかりませんので、まずは失踪宣告制度が使えるかどうかを検討し、次に不在者財産管理人制度の活用を検討するのが良いでしょう。

 

不在者財産管理人選任の申立て手続き

管轄裁判所は、不在者の従来の住所地又は居住地を管轄する家庭裁判所となります。

 

申立人となれる者は、民法上、利害関係人又は検察官と規定されています。

利害関係人については、様々なケースがありますが、今回のケースのような遺産分割協議を目的とする場合、共同相続人が利害関係人に該当します。

 

申立ての手続きですが、以下の書類を管轄の家庭裁判所に提出して行うこととなります。

・申立書・・・申立ての理由、実情や管理人の候補者などを記載します。

・財産目録・・・行方不明者の財産を目録にして提出します。

・財産に関する資料・・・不動産の場合は登記事項証明書や固定資産税評価証明書、預金や有価証券の場合は通帳の写しや残高証明書

・不在者の戸籍、住民票等・・・通常、発行後3カ月以内のものを添付します。

・不在者の不在の事実を証する資料・・・警察発行の行方不明者届出受理証明書や、返送された郵便物、陳述書など

・申立人の利害関係を証する資料・・・相続人の場合は戸籍謄本等になります。債権者の場合は契約書等です。

・申立人が法人の場合は、資格証明書(代表事項証明書)

・管理人候補者の住民票等

・(遺産分割協議が目的の場合は)相続関係説明図、相続を証する戸籍除籍謄抄本一式

 

遺産分割協議のための管理人の権限外行為の許可

選任された不在者財産管理人は、不在者の財産について保存・利用・改良の行為しかすることができません。

遺産分割協議や売却などの処分行為をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

 

管理人による権限外行為の許可申請の際には、遺産分割協議書又はその案を添付することになりすから、事前に遺産分けの話し合いを行っておくこととなります。

 

以上、ご相談のケースに即して、失踪宣告や不在者財産管理人の制度について解説しました。

相続登記や失踪宣告の申立て、不在者財産管理人の選任申立てについては、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。

 

 

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