農地法の許可と不動産登記の問題!無断転用は要注意!

今回は、不動産登記と農地の問題について、解説して参ります。

我が国においては、食料の安定供給や耕作者の地位の安定などを目的とする政策により、農地には農地法による様々な規制が設けられています。

そのような農地法の規制が土地の登記申請に関わるのはどのような場合があるのでしょうか。

 

農地法に言う農地に該当するか

我が国においては、国土の面積の十数%程度の土地が農地であるとされているようです。

まず、農地の定義ですが、農地法によると、「農地」とは、耕作の目的に供される土地、とされています。

土地の現況を見て、田や畑である場合は、農地であり農地法の規制がかかるものとなります。

 

一方で、現況が明らかに農地ではない土地であるにもかかわらず、登記記録上の地目が「田」や「畑」である土地があります。

このような土地が農地法にいう農地に該当するか否かは、あくまで土地の現況が農地かどうかにより判断されます。

ただし、登記地目が農地であるものについては、登記申請を行う際に形式的に農地と判断されてしまうので、後に説明する対応が必要となります。

 

農地の所有権を移転し、又は使用収益する権利を設定する場合(農地法3条)

農地法では、農地を売買や贈与などして、その所有権を移転したり、農地について地上権、永小作権、質権、使用貸借、賃貸借などの使用収益に関する権利を設定したりする場合は、農業委員会の許可を得なければならないとされています。

これにより、農地について、所有権移転登記や地上権設定登記などを申請する場合には、添付書類として農地法第3条の許可書が必要となります。

 

ただし、相続の場合は、農地法3条許可は不要となっていて、農業委員会に対して届出をすることで足ります。

なお、3条許可を不要とする例外規定が3条1項各号に列記されていますので、ご注意ください。

 

農地の転用の制限(農地法4条)

農地法では、農地を農地以外のものに転用する場合は、都道府県知事等の許可を受けなければならないとされています。いわゆる転用許可です。

無断で農地を宅地などに転用した場合は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金刑とする罰則規定の適用がありますから、十分お気を付け頂きたいと思います。

農地を宅地などに転用した場合は、登記の地目を変更する申請をしなければなりません。これは、法律上の義務となっていますので、ご注意下さい。

 

なお、都市計画法上の市街化区域内の農地を転用する場合は、許可までは必要ではなく農業委員会に対する届出のみで良いことになっています。(※他にも許可が不要となる規定があり、4条1項に列記されています。)

農地の地目変更の登記申請には、通常、農地法第4条の許可書又は届出書を添付することとなります。

 

農地の転用のための権利移動の制限(農地法5条)

農地を、宅地など農地以外のものにするために、農地に権利を設定し又は移転する場合は、農地法5条の許可を得なければなりません。

農地を買い取って、その後造成して宅地にして分譲するような場合が該当するものとなります。

 

5条についても、4条と同じく罰則規定の適用がありますので、要注意です。また、農地法4条や5条の適用があるような転用の場合は、都市計画法上の開発許可も併せて必要となる場合もありますから、そちらも要注意です。

この5条の規制についても、都市計画法上の市街化区域内の農地である場合は、農業委員会に対する届出のみで良いことになっています。(※他にも許可が不要となる規定があり、5条1項に列記されています。)

 

農地を宅地に造成するために、いったん農地のままで所有権移転登記を得る場合には、登記申請書に5条の許可書又は届出書を添付することとなります。

 

土地の現況と登記地目が一致しない場合

農地法の規制がかかるかどうかは、あくまで土地の現況が農地であるか否かで判断するのは、前述したとおりです。

一方で、現況は既に農地ではない雑種地や宅地などになっているにもかかわらず、登記上の地目が田や畑である場合があります。

 

このような土地を売買や贈与、地上権設定をして登記申請する場合には、登記所には形式審査件しかありませんから、農地法の規制対象であると判断されてしまい、3条許可書がないと登記できないというおかしな事態に陥ります。

そのような場合は、登記上の地目を変更し、現況と同じ地目にすることで対処することとなります。

 

① 昔は農地だった土地を造成するために、農地法4条や5条の許可を取ったが、地目変更登記を怠っていただけである場合には、許可書や許可証明書又は農業委員会が発行する現況証明書を添付して地目変更登記を申請し宅地や雑種地などにすれば、登記上も農地でないと判断されますので問題は解決します。

 

② 昔は農地だった土地が自然に荒れていって宅地化したような場合で一定期間が経過したものや、農地法施行前に農地が転用されたものなどについては、農業委員会が非農地証明書を発行してくれる場合があります。(各市町村の各農業委員会ごとに要件が異なりますのでご注意下さい。)

非農地証明があれば、登記地目を農地から農地以外のものに変更申請できますから、登記上も農地ではないと判断され問題は解決します。

 

③ 問題なのは、昔農地だった土地を無断転用したために、地目変更登記をしていないケースです。

無断転用というのは、最悪の場合は土地を農地に戻すよう、都道府県知事から原状回復を命じられる可能性があります。そうなると農地に戻した上で、転用するのであれば農地法の許可を取り直すことになるでしょう。

しかし、場合によっては、事後での農地転用許可申請を認めてくれるケースもあるようです。この場合には、始末書を一緒に添える必要があるようです。

もっとも、無断転用には説明したとおり罰則があり、悪質な場合は事後申請など認められないでしょうから、十分注意する必要があります。

 

また、市町村によっては、無断転用がされた農地で一定期間を経過する等一定の要件を満たしたものについては、非農地証明を発行する所もあるようです。(このような取り扱いがない所もありますから、各市町村の各農業委員会のホームページなどでご確認下さい。)

もし、事後の4条許可や非農地証明を得られれば、それを添付書類として地目変更の登記申請が可能となり、登記上も農地ではないと判断され問題は解決します。

 

農地に関する登記については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。なお、地目変更など表示に関する登記については、懇意の土地家屋調査士をご紹介致します。

 

 

 

 

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