今回は、贈与をする際の法律上、税務上の押さえるべきポイントと、贈与による所有権移転登記の手続きについて解説します。
このページの目次
贈与を行う場面と贈与税
贈与を行う場面
相手方に無償で財産を譲る贈与は、様々な場面で広く行われています。代表的な例を、以下に挙げてみたいと思います。
・親が子供に、生前に自宅などの不動産(土地、建物)を贈与する場合
・経営していた会社の名義の不動産(土地、建物)を、個人宛てに贈与する場合
・大学の学費など、孫のための教育資金を子に贈与する場合
・自宅である不動産(土地、建物)を、自分の配偶者(夫、妻)に生前に贈与する場合
・結婚のための支度金を贈与する場合
・住宅の購入費用を贈与する場合
・お世話になった友人に、財産を贈与する場合 etc・・・
贈与税に要注意
個人から個人へ財産を贈与する場合、贈与税には十分注意する必要があります。税率は、10%~55%の範囲内です。
ただし、贈与税には基礎控除があり、毎年110万円の範囲内であれば無税で贈与できます。
また、相続の生前対策として、税金の各種控除等を上手く活用した生前贈与については、こちらにまとめていますので、ご確認下さい。
遺産の前渡しを実現する相続時精算課税
自分の財産は、死後、相続によって配偶者や子に相続されますが、生前において事前に財産を子供に譲っておきたいというケースは多いです。
その場合は、相続時精算課税の制度を使うことによって、贈与税を上手く避けながら生前贈与が可能となります。
相続時精算課税の適用対象は、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合になります。
相続時精算課税の制度を使えば、2500万まで無税で生前に贈与でき、2500万円を超えた部分については20%の税率で贈与税を納めることとなります。
この20%で納めた贈与税は将来の相続税の計算の際に控除されますから、結局は相続税の前払いになるということです。(還付にはなりません。)
遺産の額が相続税の基礎控除の範囲内に収まっている場合に、2500万円以内の贈与をするのであれば、無税での贈与が実現するということになります。
贈与をする際の民法上のポイント
贈与の定義と成立
贈与というのは、自分の財産を、無償(=タダ)で相手に与えることを言います。贈与という言葉は一般の言葉ですので、特に説明するまでもないかと思います。
ただし、法律上、贈与が成立するのは、自分が贈与の意思表示をし、相手方がそれを受諾することによって成立します。
贈与の対象物の授受をすることは、効力発生要件ではないので、ご注意下さい。
贈与を行う際の民法上の注意点
民法上、書面によらない贈与は、各当事者において撤回することができると定められています。
つまり、契約書という書面を作らずに、口約束で贈与をしても、やっぱり辞めたと撤回をすることができてしまうのです。
ただし、書面によらない贈与であっても、既に履行が終わった部分については、撤回をできないと定められています。
つまり、口頭での贈与であっても、贈与の対象物を相手方に引き渡しをしてしまえば、もはや「やっぱり辞めた」はできなくなるという訳です。
確実に贈与をしたい場合は、贈与契約書を作成されることをお勧めします。
また、贈与契約には、様々な条件を付すこともできます。
例えば、第一志望の大学に合格したら、自動車を買ってあげるなどです。
また、自分の死亡を条件として、財産を譲るという贈与も有効です。(これを死因贈与と言います。)
さらに、贈与に負担を付ける負担付贈与というものも可能です。
例えば、自分が所有する自宅の土地建物を贈与する代わりに、老後の面倒を見てもらうことを条件とするような贈与です。
贈与契約には、民法上の契約一般の理論が適用されますし、死因贈与については遺贈の規定が準用されますので、詳しいことは当事務所の司法書士にご相談下さい。
贈与による所有権移転登記申請の手続き
贈与の登記の意義
土地や建物を贈与した場合、その名義を変更するため、登記申請手続きを行う必要があります。
登記名義を贈与を受けた者にきちんと変更をしておかないと、所有権が移転したことを第三者に対抗(=主張)できない、つまり、完全な所有権を受贈者が得たことになりませんので、登記申請をしっかりすることが必要です。
登記申請に必要な書類
贈与による所有権移転登記には、以下の書類が必要となります。
・登記原因証明情報
・登記識別情報(いわゆる権利証)
・印鑑証明書
・住民票
・固定資産税の評価証明書や課税明細など
・司法書士への委任状
登録免許税
登記を申請する際に必要となる登録免許税は、贈与対象不動産の固定資産税評価額の2%となります。
贈与契約書の作成や、贈与による所有権移転登記の申請手続き(名義変更)については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。
(税務上の論点については、提携の税理士と共同して対応致します。)