今回は、株式会社の募集株式の発行(増資)手続きと登記について、解説します。
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企業の資金調達と増資
企業の資金調達の方法には、金融機関からの融資、役員借入、社債の発行、募集株式等の発行など、様々な方法があります。
これらのうち、融資、役員借入、社債は、いずれも会社の借金であり、貸借対照表上の負債の額が増加してしまうこととなります。
一方で、募集株式等の発行、いわゆる増資を行う場合は、貸借対照表上の負債を増加させず、資本金等の純資産を増加させた上での資金調達が可能となっています。
自己資本比率を下げずに資金を調達したい場合は、増資が適していると言えるでしょう。
資本金等の計上に関する計算式
募集株式等を発行した場合の資本金等の計上に関する計算は、次のようになります。
① 払込みを受けた金銭の額(金銭出資の額)
② 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額(現物出資の場合の評価額)
③ 募集株式の交付に係る費用の額のうち、株式会社が資本金等増加限度額から減ずるべき額と定めた額 金0円
※省令により当分の間0円とされています。
④ 発行する株式の数
⑤ 処分する自己株式の数
⑥ 株式発行割合 (④/(④+⑤))
⑦ (①+②-③)の額に株式発行割合(⑥)を乗じて得た額
⑧ 自己株式処分差損(自己株式の処分の際、その対価から自己株式の帳簿価額を控除した額がマイナスの場合の額)
⑨ 資本金等増加限度額(⑦-⑧)
⑩ 増加する資本準備金の額・・・⑨の1/2が上限です。
⑪ 増加する資本金の額(⑨-⑩)
第三者割当てと株主割当て
募集株式等の発行には2つの方法があります。
1つは、第三者割当てというもので、募集が決まった新株の発行に対して、申込みをしてきた人の中から株の割り当てを受ける者を、会社が決定する方法です。
もう1つは、株主割当てというもので、募集する株式は、現在の株主に対して平等に割り当て、その株主の中で申し込みをした者だけが、払い込みをするという方法になります。
既存の株主の持ち株割合を変えたくない場合などは、株主割当てを選択することとなるでしょう。
新たな株主を受け入れ資金調達する場合は、第三者割当てを選択することとなるでしょう。
募集株式等の発行(増資)の手続き
募集株式等の発行を行う手続きの流れは、通常、以下のようになります。
募集事項の決定
原則、非公開会社では株主総会で、公開会社では取締役会で決議します。募集株式数、払込金額、増加する資本金等について定めます。
(検査役の調査)
一定規模以上で一定の要件を満たした現物出資を行う場合、必要となります。検査役は裁判所が選任します。
募集事項等の通知
公開会社は払込期日の2週間前までに、株主に対して通知又は公告します。株主割当の場合は、申込期日の2週間前までに通知します。
募集株式の申し込み
書面又はメール等で行います。
募集株式の割り当て
申し込みのあった者のうち、誰に対して株を割り当てるか決定します。募集株式が譲渡制限株式の場合は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)で、決議します。なお、総数引受契約を締結し株主総会の承認を得た場合は、申し込みと割り当てを省略できます。
出資の履行
払込期日が定められている場合は、その日までに払い込みを済ませます。(期日前の支払いもOKです。)
増資の登記申請
払込みがあった日から2週間以内に登記申請をします。
有利発行には要注意
既存の株式の評価額よりも、払込金額を安くした募集株式等の発行を有利発行と言います。
有利発行とする場合は、公開会社であっても株主総会決議が必要となります。
また、有利発行を行った場合は、株主間での贈与税が課税されるリスクがありますから、十分注意しなければなりません。
募集株式等の発行(増資)の登記申請は、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。