今回は、土地や建物の登記名義が古いまま残っている場合のリスク・問題と対処法について解説します。
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相続登記をせず放置した際のリスクと問題
現在、我が国において、登記名義人が死亡した場合の相続登記は法律上の義務としては規定されておりません。
また、法定相続分による相続の場合は所有権移転登記を行わなくても、相続人が遺産の取得を第三者に対抗(=主張)することができます。
しかし、昨年(令和元年)の民法改正により、遺言による相続登記について、法定相続分を超える部分の取得を第三者に対抗(=主張)するためには登記を経ておかなければならなくなりました。(詳しくはこちら)
つまり、相続登記をしておかなければ自分の権利を完全に保全できない場面が広がりましたので、相続登記を怠ることのリスクが大きくなったとは言えます。
しかしながら、長期間相続登記を経ていない等による所有者不明土地は、日本全体で相当な数に昇し、その面積は将来的には北海道の面積に匹敵するようになると言われています。
長期間相続登記を経ていない古い名義の土地建物については、相続人がネズミ算式に増えていきます。
私が実際に携わった案件では、明治時代の被相続人の名義の土地については、相続人が100人を超えるものがありました。行方不明の者や海外に移住した者が含まれる可能性も高いでしょう。
もし、そのような相続人多数土地を売却しようとすると、その相続人全員の同意を得るか、全員の合意により遺産分割協議をするしかないのです。
これが、極めてハードルが高いというのは想像に難くないと思います。
この所有者不明土地の処分の難しさが、東日本大震災の復興を目指す公共事業の大きな妨げになりました。
私は、国土交通省四国地方整備局で、公共事業のための用地買収を10年近く経験しましたが、やはり、所有者不明土地や相続人多数土地があると、道路や堤防の完成の工程に大きな影響を及ぼしていました。
このような問題があるため、現在、政府では民法・不動産登記法の改正を検討しており、遺産分割協議に期限を設けたり、相続登記が法律上の義務となったりする可能性が出てきています。
まだ、詳細が決まった訳ではありませんが、政府は所有者不明土地問題を重く見ており、解決に乗り出しているということです。
相続登記はお早めに
上記のような問題があることから、土地や建物の名義人がお亡くなりになった際は、早いうちに相続登記をしておくことを強くお勧めします。
長期間放置してしまうと、相続人が増えすぎて話がまとまらなくなってしまうのです。
亡くなって間もないうちは、相続人も少なく話もまとまりやすいのです。
親や祖父母等から受け継いだ土地や建物で、登記名義人が戦前に死亡しているなど、相当に古い場合もあろうかと思います。
上記のように名義が古い土地建物の相続の遺産分割協議をまとめるのは大変な労力ですが、大変だからと言って放置したままにしておくと、どんどん相続人が増えてしまい事態が悪化するだけです。
古い名義の土地建物を放置せずに、きちんと相続登記をしておくことは、未来の子孫に対する責任でもあると私は考えています。
また、遺産分割協議や遺言により相続をする場合、法定相続分を超える部分の遺産の取得については、登記を経なければ第三者に権利取得を対抗(=主張)できませんから、相続した遺産の権利を保全するという意味においても、相続登記はイチ早くしておく必要があります。
古い名義の相続登記手続き
被相続人が戦前に亡くなっている等、古い名義の相続登記を行う場合、様々なハードルをクリアしなくてはならないでしょう。
例えば、相続人を確定するための戸籍除籍の収集では、戦前の旧民法の理解が必須となります。
相続人の中に行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる必要もあるでしょう。
遺産分割協議書の記載も、法務局の審査に耐えうるよう、先例を調査しておく必要もあります。
このように、古い名義の相続登記については、専門知識が必要となりますので、まずは豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。