今回は、少額訴訟の特徴(メリット・デメリット)と制度の利用のポイントについて、解説します。
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少額訴訟とは
60万円以下の金銭の支払いを請求する訴訟については、少額訴訟という制度を利用して裁判を行うことができます。
少額訴訟は、原則として1回の期日(審理)で、判決が下る手続きとなっていますので、簡易迅速に債権回収や紛争を解決することができます。
また、判決には必ず仮執行宣言というものが付されますので、判決が確定する前でも、被告の財産の差押えが可能となり、迅速な債権回収を行うことができます。
つまり、少額訴訟は、簡単にスピーディーに、かつ、手間をかけずに債権回収をしたいというニーズに適した制度といえるでしょう。
少額訴訟の特徴(特則)
1回の期日で審理が終結する
・証拠は、即時に取り調べができるものに限定される。
・当事者は、事前に又は期日において、すべての攻撃、防御方法を提出しなければならない。
・電話会議システムを利用した証人尋問が認められる。
判決は即時に出て、強制執行も迅速に可能
・判決の言渡しは、原則、口頭弁論の終結後に直ちに行われる。
・判決で、被告の分割払いや支払猶予(3年以内)が認められる場合がある。
・認容(勝訴)判決には、必ず仮執行宣言が付される。
・少額訴訟判決は、執行文の付与を受けなくても、強制執行が可能
控訴や反訴はできない
・反訴を提起することはできない。
・控訴をすることができない。異議申し立てをして、同一裁判所にて通常の審理を受けることは可能。
・異議審においても、反訴はできず、分割払いや支払猶予が認められる可能性もある。また、控訴もできない。
・少額訴訟の利用は、当事者一人につき、年10回までの制限がある。
少額訴訟における訴状作成のポイント
少額訴訟では、原則として1期日で審理が完結しますので、訴状には、請求の根拠となる要件事実だけでなく、被告からの想定される反論に対する再反論を記載したり、重要となる間接事実(請求の要件となる事実を推認させる事実)も記載しておくことがベターでしょう。
次に、少額訴訟の訴状には、その年に少額訴訟を利用するのが何回目なのかも記載します。これは、年10回しか少額訴訟が利用できないためです。
少額訴訟は、簡易裁判所での訴訟となるため、通常訴訟で必要となる請求の趣旨と原因の記載については、請求の趣旨と紛争の要点の記載で足ります。
裁判所には紛争の類型ごとに、訴状の書式・ひな形を備え付けているところもありますから、穴埋めをして提出することも可能です。
ただし、上記のとおり、相手の反論を予測して訴状を作成しておかないと、1期日で審理が完結しなくなる可能性もありますから、司法書士・弁護士にご相談頂くことをお勧めします。
通常訴訟への移行は要注意
少額訴訟の被告は、訴訟を通常の訴訟手続き移行させる旨を申述することができます。この申述がなされると、少額訴訟は、じっくりと審理を行っていく通常訴訟へと移行することとなります。
一方で、次のような場合には、少額訴訟は裁判官の職権で、通常訴訟へと強制的に移行されることとなります。
・請求が60万円以下の金銭の支払いの請求ではない場合
・少額訴訟の利用回数の制限を超えている場合
・少額訴訟の利用回数の届出をしなかった場合
・公示送達でなければ被告に対する期日の呼び出しができない場合
そして、一番厄介なのは、
・裁判所が、少額訴訟によって審理、裁判をするのが相当ではないと判断した場合
です。
要は、この事件は複雑だなと裁判官が判断すれば、強制的に少額訴訟を通常訴訟に移行させられてしまうということです。
これは、少額訴訟制度の一つの大きなリスクだと言えます。
少額訴訟の利用に適している場合は
少額訴訟は、1日の期日で完結し、証拠も即時に取り調べることができるものに限られています。
ですので、原告サイドで、請求の根拠となる契約書や証拠書類が確保できていて、被告に争う姿勢がないことが分かっているような、シンプルな請求を行う場合というのが、少額訴訟に適しているといえるでしょう。
上述したように、裁判官に「難しいな」と思わせてしまうと、結局、通常訴訟に移行してしまします。
ですから、複雑な証人尋問の申請などは、避けるべきでしょう。
少額訴訟による債権回収や紛争の解決については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。
なお、紛争性がある訴訟相談については、電話・メール・LINEでの具体的な回答は致しておりませんので、ご面談(オンライン面談含む)でのご相談の予約をお願いします。まずは、ご連絡を頂ければ、ご予約のやり取りをさせていただきます。