今回は、株式会社の解散の登記と同時に監査役設置会社の定めを廃止する際に、前提として取締役会設置会社の定めを廃止する定款変更が必要なのか、解説します。
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株式会社の解散と機関の職権抹消
株式会社の解散の登記について
経営者が事業を廃止し株式会社を畳む場合、法律的には、株式会社を解散し、清算手続きを行うこととなります。
株式会社が解散となる事由はいくつかありますが、任意で解散させる場合は、株主総会の特別決議によって解散させることが多いでしょう。
会社を解散させた場合は、2週間以内に解散の登記を申請する必要があります。
解散の登記と同時に、清算会社の役員である清算人の登記も申請を行うこととなります。
解散時の登記事項の職権抹消
また、解散の登記がなされる際(合併と解散によるものを除く)には、以下の登記事項については、登記官の職権で抹消されることとなります。(商登規72)
・取締役会設置会社の定め
・取締役、代表取締役、社外取締役に関する登記
・特別取締役による議決の定め、特別取締役に関する登記
・会計参与設置会社の定め、会計参与に関する登記
・会計監査人設置会社の定め、会計監査人に関する登記
・監査等委員会設置会社の定め、監査等委員である取締役に関する登記、重要な業務執行の決定の取締役への委任の定款の定めの登記
・指名委員会等設置会社である旨の登記、委員、執行役、代表執行役に関する登記
解散した会社が取締役会設置会社であれば、取締役会設置の定めは、登記官の職権で抹消されますが、監査役設置会社の定めはそのまま残ることになります。
よって、解散と同時に、監査役を廃止する場合は、別途、定款変更の決議を取って、監査役設置会社の定めを廃止する必要があります。
解散時の監査役廃止は取締役会廃止決議を要するか?
現場では意見が割れる?
では、株式会社解散時に、監査役設置会社の定めを廃止する登記を申請する場合、その前提として取締役会設置会社の定めを廃止する定款変更決議は必要なのでしょうか?
上記のように、取締役会設置の定めは職権抹消されるのだから、監査役設置の定めだけ廃止決議すればいいような気もします。
これに対しては、会社継続時に、監査役のない取締役会設置会社になってしまうので、許容できないという意見もあったりします。
結論としては、取締役会設置会社の定めを廃止しなくても、監査役廃止の登記は可能と考えられます。
根拠は、次のとおりです。
文献上の根拠
●会社法立案担当者の考え方として、「取締役会を置く旨の定款の定めは、・・・(解散により)廃止されたとみなされるわけではないから、その定め自体は有効に存続する(いわゆる「空振り」の状態となる。)・・・」(登記情報541号28頁)
●会社法477条6項によると、機関に関する第4章第2節の規定は、清算会社については、適用しないとあるため、「取締役会を置く」と定められていても、清算会社では取締役会設置会社であることの効果を受けることはないという意味ですから、その定款の定めは明らかに空振り状態ということになります。(事例で学ぶ会社法実務:金子登志夫雄 P295~296)
弊所の経験から
弊所での経験上、解散時に取締役会設置会社の定め廃止の定款変更をせずして、監査役設置会社の定め廃止の登記を申請して、成功はしています。
しかしながら、上記の判断はかなり高度で難度の高いもので、現場の登記官でも判断に悩むところにはなります。
ですので、監査役廃止の決議を取る際に、取締役会設置の定めの廃止も一緒に決議しておいて、定款の形式上も矛盾が無いように整備するのが無難だと思います。
以上、株式会社の解散の登記と同時に監査役設置会社の定めを廃止する際に、前提として取締役会設置会社の定めを廃止する定款変更が必要なのか、について解説しました。
会社の解散の登記申請や機関構成の変更登記申請については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。