親の介護の問題と相続。遺産分割協議の解除は可能?

今回は、親の介護と相続、遺産分割協議の解除の問題について、解説します。

 

ご相談(遺産分割で約束した親の介護がされない場合の解除)

豊中市在住の50代女性から次のようなご相談がありました。

Q:昨年、私の父が亡くなりました。相続人は、母と兄と私の3人になります。

父は事業をしていたため、跡取りである兄が全遺産を相続するという遺産分割協議をすることとなりました。一方、母の体調が思わしくなかったため、遺産分割協議書の中で、兄が母と同居し介護をする旨を明記しました。

ところが、1年以上経った現在、兄は母の介護をほとんどしていない状態が続いています。

約束した介護をしていないのに、遺産を全て相続しているのはおかしいと思います。何とかならないでしょうか?

(相談の内容は実際のものと異なり、変更を加えています。)

 

A:遺産分割協議の中で義務付けられた債務を履行しないことによる、遺産分割協議の解除はできません。

相続人全員が合意する形での合意解除は可能ですが、お兄さんがそれに応じる可能性は低いのではないでしょうか。

同居して介護するという義務を、裁判所によって強制執行するというのも困難です。

 

遺産分割協議の解除

法定解除

民法には、契約の不履行による解除について、次のように規定されています。

第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 

では、今回のケースで、母と同居し介護をするという債務を履行しなかったことにより、遺産分割協議を解除できるのでしょうか。

最高裁平成元年2月9日の判例では、共同相続人間で遺産分割協議が成立した場合、相続人の一人が他の相続人に対して、同協議で負担した債務を履行しないときに、他の相続人は民法第541条による解除ができない、と判示しました。

残念ながら、今回のケースでは、兄の債務不履行を理由に、遺産分割協議を法定解除はできないということになります。

 

合意解除

一方で、一度成立した遺産分割協議について、相続人全員が合意して行う合意解除は可能です。(最判平成2年9月27日)

しかし、今回のケースにおいて、遺産を全て相続した兄が、合意解除に応じる可能性は低いと思われます。

 

相続と親の介護の問題への対処

今回のご相談のケースでは、遺産分割協議による親の介護の義務付けが上手く機能しませんでした。

では、相続に際して、親の介護・不要を義務付けたいという場合、どうすればより最適なのでしょうか?

 

親の居住権の確保(配偶者居住権の活用)

まずは、親に住居に関する権利を与えることを検討します。

現在(令和2年2月時点)の法制度上は、自宅を相続した者と親との間で、賃貸借契約や使用貸借契約を締結する方法しかありません。

令和2年4月1日からは、配偶者居住権の制度が始まりますから、これを上手く活用する方法を採ることができるようになります。

(配偶者居住権については、また別のコラムにて詳しく解説したいと思います。)

 

介護の見返りとしての財産の付与(遺言や信託の活用)

長男に法定相続分以上の遺産を相続させるにしても、一度に与えてしまうことは避けた方がよいでしょう。

まずは、母親は自分の法定相続分に相当する遺産を相続するようにします。

その上で、ちゃんと介護をしてくれた見返りとして、遺言を書いて長男に相続させるようにしたり、少しずつ生前贈与する方法がよいでしょう。

 

なお、母親の財産管理能力に不安がある、不安が生じそうな恐れがある場合は、信託の活用も考えられます。

委託者を母、受託者を長女、受益者を長男として信託を設定し、長男が介護をきちんと行っていることを条件に、少しずつ受益者である長男に財産を与えるようにすれば、上手くいくでしょう。

 

親の介護の問題に関連した遺産分割協議書の作成や相続登記、信託については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。

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