「住宅ローンを完済したのに抵当権の登記が残っている」 「相続した土地の登記簿に、見知らぬ古い抵当権が付いていた」
不動産の売却や相続の場面で、こうした問題に直面する方は少なくありません。
抵当権者が協力してくれれば通常の抹消登記で済みますが、協力が得られない、行方が分からない、すでに死亡・解散している——そんな場合には、訴訟による解決が必要になることがあります。
当事務所では、簡裁代理と本人訴訟支援の両面から、こうした案件に対応しています。
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抵当権抹消登記請求訴訟とその構造
抵当権の抹消登記は、本来、不動産の所有者(登記権利者)と抵当権者(登記義務者)が共同で申請するのが原則です。
ローンを完済すれば、通常は金融機関が抹消書類を交付してくれるため、この共同申請で問題なく手続きが完了します。
ところが、抵当権者が抹消に応じない、あるいは所在不明といったケースでは、共同申請ができません。
このとき採られるのが、抵当権者を被告として抵当権設定登記の抹消登記手続を求める訴訟です。
法律的には、所有権に基づく妨害排除請求権としての抹消登記請求権を訴訟物とする構成が一般的です。
原告(所有者)は、①自分が不動産を所有していること、②その不動産に被告名義の抵当権設定登記が存在すること、を主張・立証します。
これに対して被告が有効な抵当権の存在(登記保持権原)を抗弁として主張し、原告はさらに、被担保債権が弁済で消滅したこと、または消滅時効を援用したことなどを再抗弁として主張します。
抵当権は被担保債権に付従する権利ですから、被担保債権が消滅すれば抵当権も当然に消滅する——これが訴訟の骨格です。
なお、被告の所在が不明でも、公示送達により訴訟を進めることができます。
判決による抵当権抹消登記の手続きと添付書類の省略
勝訴判決が確定すると、判決による登記として、所有者が単独で抹消登記を申請できます。
被告である抵当権者の関与は一切不要です。
ここで大きな意味を持つのが、添付書類の省略です。
共同申請の場合、登記義務者(抵当権者)側の書類として、抵当権設定時の登記識別情報(または登記済証)の提供が必要です。
しかし、抹消登記手続を命ずる確定判決に基づく単独申請では、登記義務者は申請人となりませんから、登記識別情報の提供は不要です。
代わりに、登記原因証明情報として、確定判決の判決書正本と確定証明書を添付します。
古い抵当権では、そもそも登記済証が紛失していることがほとんどですから、書類が揃わないために抹消できない、という事態を判決によって打開できるわけです。
なお、判決による登記が認められるのは、判決主文または理由中で登記手続が命じられている給付判決が確定した場合であり、単なる確認判決では足りない点には注意が必要です。
休眠抵当権の抹消の方法とメリット・デメリット
明治・大正から昭和初期に設定された古い抵当権が、抹消されないまま登記簿に残っている——いわゆる休眠抵当権です。
抹消の方法は一つではなく、それぞれに一長一短があります。
訴訟による方法
被担保債権の消滅時効を援用し、抵当権者やその相続人を被告として抹消登記請求訴訟を提起する方法です。
メリットは、確定判決という強力な結果が得られ、事案を選ばず広く使えることです。
デメリットは、相続人の調査に手間がかかる場合があること、被告が生死不明の場合に判決が無効となるおそれがあること、判決確定まで一定の期間を要することです。
公示催告・除権決定による方法
抵当権者の所在が知れないときは、簡易裁判所に公示催告を申し立て、除権決定を得て単独で抹消申請ができます(不動産登記法70条1項・3項)。
訴訟によらない簡易な手続きですが、被担保債権の消滅と所在不明の事実について、しっかりした証明資料が必要です。
弁済期から20年経過+供託による方法
被担保債権の弁済期から20年が経過し、元本・利息・遅延損害金の全額に相当する金銭を供託すれば、単独で抹消申請ができます(同法70条4項後段)。
明治期の抵当権は債権額が数十円ということも多く、供託額がごく少額で済む点が最大のメリットです。
一方、昭和以降の抵当権では債権額が大きく、供託額が現実的でないことがデメリットです。
解散法人の担保権の特例
令和3年改正で新設された不動産登記法70条の2により、抵当権者が解散した法人で、弁済期から30年かつ解散から30年を経過し、所定の調査でも清算人の所在が判明しないときは、供託なしで単独抹消が可能になりました。
要件が揃えば最も負担の軽い方法ですが、対象が限定される点に注意が必要です。
司法書士の簡裁代理での対応
法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所における民事訴訟の訴訟代理権を有します。
対象は、訴訟の目的の価額(訴額)が140万円以下の事件です。
抵当権抹消登記請求訴訟の訴額は、不動産の価額の2分の1を基準とし、被担保債権額がそれを下回るときは被担保債権額によるのが一般的な取扱いです。
休眠抵当権のように被担保債権額が少額のケースでは、訴額が140万円以下に収まることが多く、認定司法書士が代理人として、訴状の提出から期日への出頭まで一貫して対応できます。
司法書士の本人訴訟支援での対応
訴額が140万円を超える場合は、認定司法書士でも訴訟代理はできません。
このようなケースでは、司法書士は裁判書類作成関係業務(司法書士法3条1項4号)として、訴状や準備書面などの裁判所提出書類を作成し、依頼者ご本人が原告として手続を進める本人訴訟を支援します。
法的な論点整理から書面作成までを専門家が担いますので、ご本人だけで訴訟に臨むよりも、はるかに安心して進めていただけます。
もちろん、勝訴判決後の抹消登記申請まで、登記の専門家としてワンストップで対応できるのが司法書士の強みです。
まとめ
抵当権の抹消は、相手方の協力があれば簡単な手続きですが、協力が得られない場合や休眠抵当権のケースでは、訴訟・公示催告・供託など複数の手続きを比較し、最適な方法を選ぶ専門的な判断が求められます。
当事務所では、訴額140万円以下の事件は簡裁代理として、それを超える事件は本人訴訟支援として、判決取得後の抹消登記まで一貫して対応いたします。
登記簿に気になる抵当権などの担保権が残っている方は、どうぞお早めに、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。



