司法書士の独占業務と行政書士業務の制限
司法書士には、司法書士法で定められた独占業務があります。
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること。(以下略)
上記第二号の法務局に提出する書類には、登記申請書のみならず、下記解説のとおりその添付書類も含まれ、これが司法書士の独占業務となっており、司法書士以外の者が依頼を受けて業として行うことを禁止しています。
一方で、行政書士法に定める行政書士の業務には、重大な制限があります。
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
判例の見解(平成12年判例調査官解説)と相続登記義務化の影響
結論から言いますと、行政書士が、依頼を受けて業として、初めから登記原因証明情報として遺産分割協議書を作成する場合は、司法書士法違反となるものと考えられます。
根拠は、行政書士が登記申請書類の作成及び申請代理を行ったとして、司法書士法違反の罪に問われた平成12年2月8日判例の最高裁調査官解説です。
以下引用
・・・登記原因証書となり得る書類は、一般的には、権利義務に関する書類として、行政書士が作成することができる書類に該当するが、初めから登記原因証書として作成される場合は、登記申請の添付書類として法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものと解される・・・
この「初めから」という要件がくせ者で、主観が入りますから、言い訳の余地を残してしまいます。
その点を悪用して、登記の添付書類を作成できると謳う行政書士が多数ありますが、後日登記申請に及ぶつもりであった場合は、やはり違法行為となっているものと考えられます。(そもそも、上記調査官解説すら知らない行政書士が多数です。)
さらに、令和6年4月から相続登記の申請が義務化されたため、不動産を含む遺産分割協議書を作成しておいて、「初めから」登記原因証明情報とするつもりがなかった、との言い訳は法務の専門家として最早通用しないものと考えられます。
なお、司法書士会では、登記申請の添付書類を作成したとして、