今回は、個人間の不動産(土地・建物)の売買とその手続きと省略の方法、注意点などについて解説します。
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不動産業者を利用しない個人間での不動産売買
土地や建物の不動産を売買する多くの場合は、不動産屋さんが仲介に入ったり、工務店が売主であったりと、不動産のプロが関与していることが多いものと思います。
一方で、家族間や兄弟間、親族間で不動産を売買したり、隣接地の所有者や近所の知り合いとの間で土地建物を売買するといったケースもあります。
不動産業者や工務店が関与する不動産売買の場合は、複雑で面倒な手続きを全てお任せにすることができますが、上記のような個人間売買の場合は、基本的には面倒な手続きの準備や段取り、書類作成など、自分で対応しなければならなくなります。
もちろん、司法書士などの専門家を有効にご利用頂ければ、楽にスムーズに手続きを進めることはできますが、司法書士を探すところはご自身で対応しなければなりません。
では、個人間で不動産を売買する際の、手続きの流れや注意点を見ていきましょう。
個人間での不動産売買の手続きの流れ
個人間での不動産売買では、不動産業者が関与する場合と異なり、当事者さえ良ければ手続きを相当に簡素化することもできます。
もちろん、手続きを簡素化すれば、その分取り引きにリスクが生じますので、その点については当事者で話し合い、契約書に免責条項などを落とし込む必要があります。
手続きのフロー
①対象物件について、登記情報、公図、地積測量図、建物図面など法務局関係の資料を調査
↓
②都市計画法、建築基準法などの公法上の規制について調査
↓
③現地の対象物件について、不具合などないか調査
↓
④売買金額について、話し合い決定する
↓
⑤売買契約締結
↓
⑥隣接地との境界確認
↓
⑦代金支払・登記申請(決済)
↓
⑧譲渡所得税の申告
上記の①~⑧の流れは、不動産業者さんが関与するのと同じレベルでの手続きの流れになります。
個人売買の場合は、省略できる部分が色々とありますので、解説していきます。
個人間での不動産売買で省略できる手続き
①の法務局資料調査については、最終的には所有権移転登記の申請をしなければならないため、省略することは考えにくいところです。
②の公法上の規制調査については、不動産業者さんが関与する場合の重要事項説明書に相当する部分になりますが、個人間売買では、不動産業者さんが行う場合よりは簡略化して、場合によっては省略して、売買をすることもあります。
ただし、不動産に関する公法上の規制について、調査せずに売買するということは、買主としては違法な物件を買ってしまうリスクが生じます。
買主がそれでも良いのだ、というような場合に調査を省略することになるでしょう。
また、調査を簡略・省略した場合、売買契約書の中で買主が契約不適合責任(旧の瑕疵担保責任)を問うことができないと規定し、そのリスクを売買価格に織り込むといった対応が必要となります。
③の現地調査についても②と同じで、不動産の現物の調査を省略した場合は、買主が不具合のある物件を買ってしまうリスクが生じます。
これについても、買主がそれでも良いのだ、というような場合に調査を省略することになるでしょう。
また、調査を簡略・省略した場合、売買契約書の中で買主が契約不適合責任(旧の瑕疵担保責任)を問うことができないと規定し、そのリスクを売買価格に織り込むといった対応が必要となる点も同じです。
⑤の売買契約について、個人間売買といえども、不動産の売買を行う場合は、売買契約書は必ず作るべきでしょう。
上記のような契約不適合責任の問題もありますし、買主が融資を受ける場合は、契約後にローンの審査を受けるため、決済日を別日で設ける必要がありますから、やはり契約書は必須です。
⑥の境界確認については、土地を分筆しない全筆での売買の場合は、省略することは一応可能ではあります。
しかし、省略をしてしまうと、買主は隣接地との境界が未定であったり、境界紛争が生じている土地を買ってしまうリスクが生じます。
また、境界確定・測量を省略する場合、売買する土地の面積を登記上の面積とすることとなり、売買金額が不正確となるリスクも生じます。
なぜなら、登記上の土地面積というのは、相当にいい加減な場合が多いからです。(地積測量図が出ているなど測量を経ている場合は別です。)
これについても、買主がそれでも良いのだ、というような場合に境界確定を省略することになるでしょう。
また、境界確定を省略した場合、売買契約書の中で買主が契約不適合責任(旧の瑕疵担保責任)を問うことができないと規定し、そのリスクを売買価格に織り込むといった対応が必要となる点も同じです。
⑦の代金支払・登記申請について、不動産を購入しておきながら、所有権移転の登記をしないとなると、買主は完全な所有権を得たことにならず、第三者に所有権を取られてしまうリスクまでありますから、通常、省略することは考えられません。
⑧の所得税申告については、税金が生じているのならば必ずしなければなりません。計算してみて無税ならば申告は不要です。
個人売買における税務上の注意点
譲渡所得税に注意
個人間での不動産売買を行い代金を支払うと、買主には譲渡所得税が生じる可能性が出てきます。
譲渡所得税の計算上、売主が対象不動産を取得した時に支払った金額が取得費として控除できますので、転売益があれば課税されますし、転売益が無い場合には課税されないこととなります。
過去の取得費の証拠書類がない場合、控除は今回の売買代金の5%となりますから要注意です。
(詳しくは、税理士にご相談ください。)
低廉譲渡での贈与税にも要注意
また、個人間売買において、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合、贈与税が生じるリスクがありますので、これは要注意です。
下手をすると売買代金の半額近い金額が税金で取られてしまいます。
特に、家族間・親族間での売買では、売買代金を低廉に設定してしまいやすいので気を付けてください。
(詳しくは、税理士にご相談ください。)
個人間売買での専門家の活用法
上記のように、個人間売買では色々な手続きを省略は可能ですが、その分リスクが上昇することはご理解頂けたと思います。
②の公法上の規制の調査や③の現地調査を行う場合は、宅地建物取引士に任せれば安心です。
⑥の境界確認や分筆の登記申請を行う場合は、土地家屋調査士に任せることになるでしょう。
⑤の売買契約書の作成や⑦の所有権移転登記申請は、司法書士に任せれば間違いありません。
⑧の譲渡所得税の申告は、税理士に任せれば安心です。
このように、個人間売買は、本来複数の専門家が関与して成り立つものです。
ただし、可能な限り、手続きや費用を省略したいという場合もあろうかと思います。そのような場合は、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。
手続きを省略のリスクを織り込んだ契約書を作成し、費用を抑える方法をご提案します。