今回は、整理解雇の要件と解雇予告手当の請求について解説します。
このページの目次
想定事例(解雇予告手当の支払われない即時解雇)
Q:私は、豊中市内の小さな会社で正社員の営業マンとして勤めています。月給は月30万円くらいです。
会社の業績が急激に悪化したため、社長から「もうこの会社は長くはもたない。本日限り、従業員はクビにする。」と言われ、次の日からは出勤していません。
解雇されたことは、百歩譲って仕方ないと思うのですが、解雇予告手当というのはもらえないのでしょうか?
(ご相談の内容は、想定となります。)
A:まず、解雇については、整理解雇としての4要件を満たしていれば有効となります。
ただし、解雇をする場合には、解雇日の30日前に予告し、解雇予告手当を会社は支払わなければなりません。
あなたの場合、予告もされていませんし、手当も支給されていませんから、解雇予告手当を会社に請求することができます。
整理解雇の4要件
解雇にはいくつか種類があります。普通解雇、懲戒解雇、諭旨解雇、整理解雇がありますが、会社の業績の悪化を理由とする解雇は整理解雇にあたります。
とはいっても、会社の業績が悪化したら、好き勝手に解雇できるというものではありません。
整理解雇が有効となるためには、次の4つの要件を満たす必要があります。
●人員削減の必要性があること・・・企業の合理的運営上やむをえない必要があれば、足りるとされています。
●解雇回避の努力をしたこと・・・希望退職の募集、配転、出向、残業の廃止など手を打つ必要があります。
●解雇をする人選の合理性・・・客観性のある基準を作っておく必要があります。
●解雇手続きの相当性・・・労働者への説明や協議を十分行う必要があります。
ご相談のケースでは、整理解雇の要件を満たしているかどうかは判然としませんが、倒産寸前であれば、要件を満たすことも十分考えられます。
また、ご相談者本人が解雇については、争わない姿勢ですので、今回は問題にしないこととします。
解雇予告手当とその計算
労働者を解雇する場合、会社は、少なくとも30日前にその予告をするか、又は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
これを解雇予告手当金といいます。計算方法は、次のとおりになります。
●30日には満たないけれども、予告があった場合は、その日数を控除します。
例えば、予告が解雇の5日前にあった場合は、会社は、不足の25日分の解雇予告手当を支払う義務があります。
●平均賃金は、解雇日前の3か月分の賃金の総額を、解雇日(賃金〆切日がある場合は直前の〆切日)の前日から逆算して3か月間の総日数で除して求めます。
ただし、3か月分の賃金には、臨時に支払われるものや、ボーナス等は含みません。一方、通勤手当(交通費)、皆勤手当、家族手当、時間外労働手当などは、すべて賃金総額に含めて平均賃金を計算することになります。
ご相談のケースでは、給料の明細が分からないため、具体的な細かい計算はできませんが、大雑把に言うと給料の30日分ですので30万円前後の解雇予告手当の請求が見込めそうです。
なお、解雇予告手当を裁判によって請求する場合は、付加金という制裁金を請求できますので、通常の解雇手当の2倍の額を請求することができます。(付加金の金額は、司法書士の代理権の範囲(140万円以下)の判断には影響しません。)
解雇予告手当が請求できない場合
次のような場合には、解雇予告手当が請求でない可能性が高まりますので要注意です。
●解雇ではなく、辞表を出している場合・・・会社都合で辞めさせられる場合は、安易に辞表を書くと不利になる可能性が高いです。
●解雇の理由が労働者側の責任である場合・・・犯罪行為や重大な職務違反などがある場合は、解雇予告を請求できません。
●天災事変その他やむを得ない事由のために、事業の継続が不可能になったことによる解雇であること
司法書士による解雇予告手当の請求
解雇予告手当の未払いによる請求は、その金額が140万以内になることがほとんどかと思われます。
司法書士は、争いの金額が140万円以内であれば、弁護士と同じように相手と交渉したり、代理人として訴訟することができます。
もちろん、とりあえず内容証明郵便を出して様子を見るということもできます。
解雇自体を争う場合は、管轄が地方裁判所となりますので、書類作成による本人訴訟支援を行うこともできます。
(なお、労働紛争の解決方法全般についてはこちらを、未払い残業代請求についてはこちらをご覧ください。)
解雇予告手当の請求については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。