今回は、離婚協議書の作成とそのポイントについて、解説したいと思います。
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離婚協議書の作成の必要性
我が国においては、年間20万組以上の夫婦が離婚している現実があります。割合にして、3組に1組の夫婦が離婚していると言われています。
その離婚のうち、本格的な離婚裁判となるのはわずか数%で、ほとんどの離婚が協議の上合意して成立しているのです。
本格的な離婚裁判となるような案件は、弁護士さんにお任せすることも検討すべきでしょう。
けれども、夫婦間で紛争とならず、協議離婚が成立する場合は、司法書士に離婚協議書の作成を任せておけば、養育費の不払いなどの後日の紛争の予防に役立ちます。
離婚協議書を公正証書にすべきかどうか
離婚協議書は、必ず公正証書にしなければならないものではありません。署名押印についても、認印でも協議は成立となります。
けれども、当事務所では、後日の紛争の予防及び対策のために、公正証書にすることを強くお勧めします。
公正証書にすることで、文書が偽造であるかどうかという点での紛争を防ぐことができるのはもちろんのこと、万が一、養育費の不払いが生じた場合には、裁判を省略して、直ちに強制執行を行うことが可能となるという最大のメリットがあるからです。
なお、養育費等の不払いによる差押えなどの強制執行については、こちらをご覧ください。
離婚協議書には何を書けばいいのか?
協議離婚をする際には、以下に記載する論点について、合意してお互いに決めておく必要があります。
・親権者の指定
・養育費の支払い
・財産分与
・子供との面会交流
・年金分割
・(必要に応じて)慰謝料とその支払い
親権者の指定について
離婚に際しては、両親のどちらか一方を親権者に決める必要があります。(離婚届にも親権者を記載する欄があります。)
親権者が行う親権というのは、財産管理権と身上監護権に分かれます。
財産管理権というのは、子供の財産を管理し代理して処分などを行ったり、子供の法律行為に同意を与える権利です。
身上監護権というのは、子供の居所を指定し、職業を許可し、子供を懲戒(しつけ)し、子供の身分行為について同意・代理(婚姻の同意など)する権利です。
この親権の中には、監護権という権利も含まれます。監護権というのは、子供と共に生活をして日常の世話や教育を行う権利のことです。
通常は、親権者が同時に監護権も行使することになりますが、子供が幼い場合や父親が海外に出張しているなどの場合には、親権者と監護権者を分けた方が良いこともありますので、その場合は離婚協議書に明記しておくこととなります。
養育費の支払いについて
養育費は、子供が親と同程度の生活水準で生活するための費用で、食費・衣料費・住居費・教育費等が含まれます。
離婚協議書においては、支払期間、支払金額(月額)、支払日、支払方法(振込口座)などを、規定しておく必要があります。
支払期間については、「子が高等学校を卒業するまで」や「子が成人するまで」や「子が大学を卒業するまで」など、当事者の事情に応じて定めることとなります。
なお、離婚する当事者間で養育費について、上手く合意できない場合は、離婚調停や裁判の際に用いられる裁判所が定めた「養育費算定表」を参考にすることができます。
財産分与について
夫婦の財産については、婚姻前から所有しているものや相続や贈与で得た財産は、夫又は妻の特有財産(一人だけで所有している財産)となります。
しかし、婚姻中の夫婦が共同生活の中で得た財産は、夫婦の共有と推定されます。
離婚にあたっては、この夫婦の共有財産を財産分与という形で清算することになります。
財産分与は、芸能人や医者など特殊技能で高額な報酬を稼ぐ職業を除き、通常、1/2ずつの割合での清算となります。(これを清算的財産分与と言います)
財産分与で不動産の所有権や共有持分が移転する場合は、登記申請が必要となりますので、司法書士に離婚協議書の作成を依頼している場合、スムーズに手続きが進みます。
その他に、財産分与には、離婚した配偶者が経済的に困窮してしまう場合の扶養的財産分与や、元配偶者に不貞行為があった場合などの慰謝料を財産分与に含める慰謝料的財産分与があります。
離婚協議書には、何を、どの様にして分与するのか、明確にして記載します。
子供との面会交流について
子供と同居しないこととなった親(非監護親)と子供が、離婚後においても、面会したり手紙をやりとりしたりする面会交流についても、離婚協議書に定めることとなります。
民法上、子供との面会交流については、子供の監護の一部であると考えられているからです。
面会交流することについては、諸説ありますが、子供の利益とならないような事情があるケースを除き、親の権利でもあり、また、子供の権利でもあります。
離婚協議書においては、その方法、回数、日時、場所などについて、定めておくこととなります。
年金分割について
離婚に際しては、夫婦間の年金の分割についても、合意しておく必要があります。離婚時の年金分割には、①合意分割、と②3号分割があります。
合意分割とは、厚生年金の報酬比例部分のみに関する分割で、婚姻期間中の標準報酬等(年金計算上の所得)を当事者間で分割することとなります。(平成19年4月1日以降の離婚のみが対象となります)
この分割は、1/2が上限ですが、特殊な事情が無い限り、通常1/2の割合で分割することとなりますので、割合を離婚協議書に記載します。
3号分割とは、平成20年5月1日以降に離婚をした場合、国民年金の第3号被保険者(サラリーマンの妻など)からの請求により、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の相手方の標準報酬等(年金計算上の所得)を1/2ずつ、分割するものです。
なお、分割割合は、1/2と決まっているので、離婚協議書で割合について合意する必要はありません。
上記のように、年金分割は、標準報酬等の分割であって、年金受給額自体を分割する訳ではないことに注意が必要です。
慰謝料について
離婚に伴う慰謝料については、
・不貞行為(浮気)、悪意の遺棄、暴力行為、性交渉の拒否などによる精神的苦痛に対する損害賠償
・離婚そのものによる精神的苦痛に対する損害賠償
に分かれますが、実務上は明確に区別しないことも多いようです。
長期の別居を経た離婚などのように、夫婦のどちらかに明確な離婚原因が無い場合には、慰謝料が発生しません。
なお、不貞行為を行った場合は、共同不法行為となり、不貞行為を行った夫又は妻とその不貞行為の相手方が、法律上、連帯して賠償する責任を負うものとなります。
(※離婚そのものによる慰謝料は、特殊事情が無い限り、浮気の相手方には請求できないという判例が平成31年2月19日に出ています。)
慰謝料の額の相場ですが、大部分のケースで、100万~300万円の範囲で収まっているようです。
離婚協議書においては、慰謝料の支払い義務を認める旨の文言や支払方法、不貞行為の相手方に対する支払い請求の可否などについて定めます。
以上、離婚協議書の作成のポイントについて解説しましたが、離婚協議書の作成については、豊中司法書士ふじた事務所にお気軽にご相談下さい。