遺産分割協議の対象となるもの、ならないもの!

今回は、遺産分割協議を行うにあたって、対象になるものとならないものについて、解説します。

 

遺産分割協議について

被相続人(故人)が亡くなると、被相続人が有していた財産や権利義務は、共有状態となったり、法定相続分に応じて当然に分割されたりします。

この共有状態となった遺産の帰属先を決定するのが、遺産分割協議である、ということになります。

一方で、被相続人の死亡により、当然に分割される性質のものは、原則としては遺産分割協議の対象ではありません。しかし、合意により対象に含めることができるものもあります。

以下、遺産分割の対象となるもの、ならないものを個別に解説致します。

 

遺産分割協議の対象となるもの

不動産

不動産は、遺産分割の対象となります。遺産分割協議の結果に応じて相続による所有権移転登記ができますし、法定相続分どおりの相続登記もできます。

賃借権

賃借権は、不可分債権と言って、共有者ごとに分割することができない債権であるため、相続により共有状態となりますので、遺産分割の対象となります。

預貯金

過去には、預貯金は、分割可能な可分債権であることを理由に、相続により各相続人の相続分に応じて当然に分割され、遺産分割の対象とならないとされていました。

しかし、平成28年の最高裁判例により、預貯金債権が遺産分割の対象となるとの判例変更がなされましたので、現在は遺産分割の対象となるものです。

現金

現金は、法律上は動産としての扱いとなるため、遺産分割の対象となります。なお、相続人は、遺産分割前に、遺産である現金を保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する現金について、支払い請求をすることはできません。

株式

株式は、相続により共有状態となるため、遺産分割の対象となります。なお、会社の定款に、株主が死亡した際には、会社が売渡請求をできる旨の規定が入っている場合がありますので、要注意です。

死亡退職金

死亡退職金は、賃金の後払いの性質のものと、遺族の生活保障の性質のものに分かれます。死亡退職金の支給の根拠となる規定や法令により、どちらの性質なのか判断することとなります。規定や法令がない場合は、支給の慣行や経緯等から判断します。

賃金の後払いの性質のものであれば、遺産性があり、遺産分割の対象となります。遺族の生活保障の性質のものの場合は、遺産性が否定され、遺産分割協議の対象とならないものとなるでしょう。

 

国債・社債

国債・社債は、相続により共有状態となりますので、遺産分割の対象となります。

動産

動産は、相続により共有状態となりますので、遺産分割の対象となります。

 

遺産分割の対象とならないもの

債権

債権は、原則として、相続により各相続人の法定相続分に応じて当然に分割され、共有状態とはならないため、遺産分割の対象とはなりません。

ただし、上記の通り、預貯金債権や賃借権等の例外はあります。また、相続人全員の合意により、遺産分割の対象とすることはできます。

債務

債務は、相続により各相続人の法定相続分に応じて当然に分割され、共有状態とはならないため、遺産分割の対象とはなりません。

ただし、相続人間で、債務の承継者を決めることはできます。

この場合、債権者の承諾がなければ、その債務承継者が債務を引き受けたことを債権者に対抗することはできませんが、債権者の承諾がなくても、債務承継者以外の相続人が弁済した場合は、債務承継者に求償することはできます。

生命保険

被相続人が契約した生命保険は、受取人がどのように指定されているかで、遺産分割の対象となるかどうかが異なります。

①受取人を特定の相続人と定めている場合は、その者の固有の財産となりますので、遺産分割の対象となりません。

②受取人を指定しなかった場合は、保険約款の定めに従うこととなります。もし、保険約款に「被保険者の相続人に支払う」という規定がある場合は、各相続人が法定相続分に応じて取得するため、遺産分割の対象となりません。

③受取人を被相続人としていた場合は、満期保険金は相続財産となりますので、遺産分割の対象となります。しかし、保険事故による保険金は、相続人を受取人と指定する黙示の意思表示があったと解され、相続人の固有の財産となりますので、遺産分割の対象となりません。

使用貸借権

使用貸借権は、民法上、借主の死亡により終了するものとされていますので、原則としては相続の対象となりません。

ただし、相続の対象とする旨の特約が契約書に記載されていたり、建物所有のための使用貸借である場合は、借主の死亡によっては当然に終了しないこともあります。

葬儀費用

葬儀費用の法的性質には諸説あり、その取扱いは一律ではありませんが、実務的には葬儀の主催者が負担すると解釈されることも多いようです。

もちろん、相続人全員の合意により、相続に係る諸費用として、遺産分割協議の対象とすることは可能ですし、よく行われているようです。

祭祀財産

祭祀財産とは、系譜、祭具及び墳墓のことを指します。簡単に言うと、家系図、仏壇、お墓のことです。

祭祀財産は民法上、遺産分割とは別の規定があり、被相続人が指定するものが承継するとされています。指定がない場合は、慣習により、慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所が承継する者を定めます。

賃料などの法定果実(収益)

相続開始後の賃料や株の配当金などは、相続財産ではなく、各相続人がその法定相続分に応じて取得するため、遺産分割の対象とならないのが原則となります。

ただし、相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めることは可能です。

遺産の管理費用

相続開始後の固定資産税や火災保険料、支払賃料などは、各相続人がその法定相続分に応じて負担するため、遺産分割の対象とならないのが原則となります。

ただし、遺産に関する負担であることから、相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めることは可能です。

使途不明金

使途不明金については、こちらをご覧ください。

 

遺産分割の対象となるものなのかどうかの判断や、遺産分割協議書の作成については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。

 

 

 

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