親子や兄弟姉妹の扶養義務とその手続き

今回は、民法が定める扶養義務について、解説します。

 

家族の助け合いと法律

いつの時代においても、家族愛というものには普遍的な価値があるように思いますが、我が国の法律では家族関係をどのように規定しているのでしょうか。

民法においては、

 (親族間の扶け合い)
第730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶(たす)け合わなければならない。  ※括弧書きは筆者による

という規定が存在します。しかし、この規定は、直接的な法律上の義務を定めたものではなく、道徳的な義務を課したものにすぎないと考えられています。

家族が助け合うというのは、当たり前のことですし、助け合うことを法律で強制するものではないということなのでしょう。

 

扶養義務の規定

民法では、扶養義務という法律による権利義務を規定する条項があります。

 (扶養義務者)
第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 (省略)

直系血族というのは、親や祖父母、子や孫といった縦の血のつながった者のことを言います。つまり、法律上は、親子や兄弟姉妹の間では、扶養をする義務があるということです。

扶養をする義務というのは、具体的には、生活をするために必要な費用を負担することとなります。扶養をするために同居をすること(=引取扶養)については、労働力を強いることになるので、通常は、引取者の同意がなければ家庭裁判所も審判をすることができません。

この扶養義務に基づいて扶養料を請求する例として多いのは、父母の離婚後に親権者である母に引き取られた子が父に対して扶養料を請求したり、老齢となって収入も少ない父母が子に対して扶養を請求したり、扶養義務者のうちの一人が扶養料を全額負担したので他の扶養義務者に求償を請求したりするケースでしょう。

 

扶養義務の範囲と要件

では、直系血族や兄弟姉妹は、どんなことがあっても必ず扶養をしないといけないのかというと、決してそうではありません。

直系血族の扶養と兄弟姉妹の扶養では、その義務の程度と要件が異なります。

親が未成熟な子を扶養する場合は、生活保持義務といって、扶養義務者(親)が自分と同程度の生活を保障しなければなりません。けれども、扶養義務者が自分とその同居の親族の最低生活費を賄ってもなお経済的に余力がある場合に、扶養義務が生じるとする考え方が有力です。

兄弟姉妹間や子から老親に対する扶養の場合は、生活扶助義務といって、扶養義務者がその社会的地位に相当する生活をして、なお経済的に余力がある場合に、生活保護の水準の生活をさせる義務となります。なお、通常は、扶助を請求する者の収入が生活保護の基準以下であることが、要件となります。

 

扶養の順位

扶養義務の順位については、原則として当事者間での協議により定めます。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることとなります。

扶養の順位として裁判例で基準が示されているものの中で、重要なものは以下のとおりです。

①生活保持義務は、生活扶助義務に優先する。(兄弟姉妹や老親の扶養より、未成熟子に対する扶養の方が優先。)

②子に対する扶養は、親権や同居の有無によって、順位の差はない。

③老親に対する子の扶養義務は、老親の兄弟姉妹の老親に対する扶養義務に優先する。

あくまで原則が協議ですので、上記の順位付けは、扶養料請求の調停が不成立となり審判になった際に考慮されるものとなります。

 

養育費請求と扶養料請求

経済的に自立していない子に対する親の扶養に関して、家庭裁判所の手続きには2種類あり、養育費請求と上記のような扶養料請求があります。

養育費請求は、離婚した際に養育費の取り決めをしておらず、元妻が元夫に養育費の支払いを請求するなどといったもになりますす。

一方、扶養料の請求は、経済的に未成熟な子を法定代理人である母が代理して元夫に扶養料の支払いを請求するなどといったものになります。

養育費請求にしても扶養料請求にしても、調停を経て審判となると家庭裁判所作成の算定表が参考とされ、扶養料が計算されます。

 

代理人を付けるか、本人訴訟で対応するか

家庭裁判所に対する扶養料の請求については、通常は、家庭裁判所に調停を申し立てることにより行います。家庭裁判所での調停・審判の場合は、原則として本人が出頭することとなりますが、弁護士を代理人につけた場合は代理人も同席することができます。

弁護士を代理人につけたとしても、ご本人が出頭することに変わりはありません。(ご本人が病気となるなどやむを得ない場合は、代理人のみの出席も可能です。)

 

扶養の順序や負担について協議がまとまった時は

もちろん扶養に関する取り決めは、必ず家庭裁判所を利用しなければならないものではありません。

 

上記のとおり、扶養をすべき者の順序については、まずは当事者の協議にて決めることになります。

また、扶養の程度や方法についても、まずは当事者の間で協議をして、誰がどのくらいの扶養料の負担をするのか決めることが原則になっています。(協議が整わない場合、できない場合に、家庭裁判所のお世話になることとなります。)

 

これらの扶養に関する当事者間の協議が整ったときは、協議書などの書面にしっかり残し、各自が署名押印するべきでしょう。

そうすることで、後日紛争となり、家庭裁判所のお世話にならざるを得ない状況を避けることができます。

 

 

弁護士のサポートを受けつつ調停・審判を進めたい場合は、弁護士に依頼することとなりますが、ご自身だけで調停・審判を行いたいけれども専門家のサポートは受けたいという場合は、司法書士の本人訴訟支援を受けるという方法がありますので、当事務所にお気軽にご相談下さい。

 

また、扶養の順序や扶養料の負担の程度や方法について、当事者間で取り決めをした場合の協議書の作成についても、当事務所にお気軽にご相談下さい。

 

 

 

 

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