今回は、民間と国の不動産売買の決済の違いについて、解説します。
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国と民間の両方で不動産売買を経験
私は、大学卒業後約11年間、国土交通省四国地方整備局というところでノンキャリア国家公務員をしておりました。
そのうちの9年間は、用地買収に関する仕事をしていましたので、国が土地を買い上げる時の手続きについてよく知っています。
また、司法書士としても、マイホームなどの不動産売買の決済を経験しています。
民間の不動産売買の決済の方法
まず、民間の売買ですが、例えばマイホームを買う時には、決済日に売主、買主、司法書士、不動産業者、銀行員が集まります。
そして、権利証や印鑑証明書、委任状など、売買の当事者から受け取った書類を司法書士が確認し、登記ができると判断できたら、決済の実行(資金の融資と売買代金の支払い)をかけます。
買主は、登記が自分の名義に変わることが確実にならなければ、売主に売買代金を支払うことができないので、司法書士が登記書類を確認しGOサインを出すのです。
司法書士のGOサインで、住宅ローンの銀行から買主の口座に融資した資金が振り込まれ、そのお金が直ちに売主に支払われ、売主はそのお金で借りていた住宅ローンを返済します。
一方、登記の申請順は、このお金の流れとは逆方向の、抵当権抹消(売主側)→売買による所有権移転→抵当権設定(買主側)となります。もちろん、決済日当日に、これらの登記を間違いなく申請することが、司法書士の重要な仕事です。
国の用地買収における土地売買の方法
次に、国の用地買収における土地売買の手順は、次のようになります。
例として、自宅の土地建物が道路の拡幅工事に掛かり、土地は面積の8割程度が買収、建物は構外再築となるケースを想定します。
国が提示した補償金に納得した地権者は、国と契約を締結します。その際に、用地課職員が登記に必要となる登記承諾書に実印で押印をもらい、印鑑証明書も受け取ります。この時の民間との最大の違いは、売主である地権者の権利証(登記識別情報)は必要ないということです。
不動産登記法において、国が登記する場合は、嘱託登記といって単独申請となる規定があるため、権利証(登記識別情報)なくして売買の登記ができるのです。
上記のように国が、契約締結して登記承諾書を受け取ると、1か月程度後に、地権者に前金として補償金の7割が振り込まれます。
また、それと同時並行で、代位による分筆登記を国が嘱託し(これは土地家屋調査士に委任します。)、分筆が完了次第、国を権利者とする所有権移転登記を嘱託します。なお、所有権移転は用地課職員が手続きを行います。
そして、建物の取り壊しが終わって、土地を国に引渡すと、補償金の残りの3割が地権者に振り込まれます。
このように、国の不動産売買は、代金と登記が引き換えになるという、同時履行の関係になっていません。
その理由は、国は債務不履行をすることがないからです。地権者(売主)としては、代金の全額の支払いよりも先に登記の書類を国に渡してしまっても、国が地権者を裏切り、代金の支払いをしないということは起こり得ません。もちろん、契約通りに建物を取り壊すことは、後金の支払い条件とはなります。
同じ不動産売買であっても、民間と国とでは、その手順や考え方が全く異なるものとなっているのです。
不動産売買の決済、登記申請は、豊中司法書士ふじた事務所にお任せ下さい。また、公共事業による立ち退きのことや補償金の問題についても、ご不安などおありの場合はご相談に乗りますので、お気軽にお問合せ下さい。