皆様は司法書士と聞いて、何をする職業なのかピンと来ますでしょうか?おそらく多くの人が、どんな仕事をしているのかあまりご存じではないのではないでしょうか。
弁護士や税理士に比べると知名度は落ちますし、名前が良く似ているので行政書士と間違われたりもします。
今回は、司法書士の職務を、司法書士法という法律を参照しながら解説したいと思います。
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登記、供託手続の代理
司法書士業務の中で最も大きなウエイトを占めているのが、登記・供託手続きの代理になります。もちろん手続きに必要となる書類を作成することも、司法書士の職務として、法律に明記されています。
登記には、不動産登記(権利登記、表示登記)、商業・法人登記、動産登記、債権登記などがあり、法務省の地方支分部局である法務局(登記所)が管轄しています。
司法書士は、土地家屋調査士の独占業務である不動産の表示に関する登記申請手続きを除き、登記に関する書類作成と手続き代理を行うことができます。
供託手続についても、同じく法務局が管轄しており、供託に関する書類作成と手続き代理も司法書士の業務となっています。
また、審査請求といって、法務局に所属する登記官の行った処分等に不服がある場合は、法務局長又は地方法務局長に不服申し立てができるのですが、この審査請求手続きの代理も司法書士の業務の一つです。
その根拠となる司法書士法の条文は、以下のとおりです。
第3条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録((前略)・・電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続きについて代理すること。
裁判書類作成関係業務
司法書士の業務として最も古くから規定されているのが、この裁判書類作成関係業務です。
司法書士という職業が誕生したのは明治5年で、その時には「代書人」という名称でした。代書人は、裁判所に提出する訴状を作成することがその職務とされていました。
その後、大正8年に司法代書人法が制定され、司法代書人の業務が裁判所又は検事局(今の検察庁)に提出する書類の作成であることが規定されました。
ですので、今でも司法書士は、裁判所に提出するあらゆる書類を作成することが可能で、その種類や訴額に制限はありません。ただし、裁判書類作成業務を通じて行う本人訴訟支援は、弁護士法72条の制限内で行うこととなります。
また、平成18年に始まった筆界特定制度という土地の登記上の境界を明らかにする手続きにおいて、法務局に提出する書類を作成することも司法書士の業務の一つです。
その根拠となる司法書士法の条文は以下のとおりです。
第3条 (略)
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続き(・・(略)・・)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
相談業務
上記の登記・供託手続や書類作成、裁判所提出書類や筆界特定手続書類の作成について、相談に応じることも司法書士の業務として明記されています。
ここで要注意なのが、この相談業務も司法書士の独占業務であるということです。そして、それは報酬を得たり、得る目的であるかどうかは関係ありません。
たとえ無報酬であったとしても、業、つまり仕事として、登記申請書、その添付書類及び裁判所に提出する書類等を作成したり、その作成方法や手続きの相談に乗ったりするだけで違法行為となり、最悪の場合、罰則規定の適用を受け有罪となる可能性があります。
簡裁訴訟代理等関係業務
政府が推し進めていた司法制度改革の一環で、司法書士法が平成14年に改正され、司法書士に140万円以内の事件に関する、簡易裁判所における訴訟代理権や裁判外での和解交渉権、法律相談(鑑定)権が付与されました。
訴訟代理権の付与に伴って、訴訟の前提となる簡易裁判所での証拠保全や民事保全手続きについても代理権が付与されています。
また、140万円以内の事件に関する簡易裁判所での民事調停や訴え提起前の和解、支払督促手続についても代理権が付与されています。
強制執行については、原則として地方裁判所管轄であるため代理権は付与されていませんが、簡易裁判所での少額訴訟債権執行手続については代理権が付与されています。
上訴の提起や再審に関しては、原則として代理権がありませんが、司法書士が代理人となった事件の判決等に関して上訴の提起のみをすることは認められています。
また、筆界特定手続きについては、境界紛争対象土地の評価合計額が5600万円以下のものに限り、代理権が付与されています。
根拠となる条文は、以下のとおりです。
第三条 (略)