売主が登記申請に協力してくれない!?登記請求訴訟と判決による登記について解説。

今回は、不動産の売買をしたが売主が登記申請手続きに協力してくれない場合の登記請求訴訟について解説します。

不動産の売買をしたが登記に協力してくれない

不動産の売買をする場合、大多数のケースでは、買主による代金の支払いと売主による登記書類の交付が引き換えの関係になっていることから、司法書士が立会を行います。

しかし、何らかの事情があり、売買代金を先に支払い、登記書類の交付及び申請を後からするケースが稀にあります。

この場合にトラブルになるのは、事後の登記申請に売主が協力してくれないときです。既に代金を支払ってしまった買主は、是が非でも登記名義を取得しなければなりません。

 

任意での登記申請では、売主が所持している対象物件の権利証(登記済証、登記識別情報)、売主の印鑑証明書、売主の実印が押印された委任状が添付書類として必要となります。

これらの書類は、売主の任意での協力がなければ手に入らないものばかりです。売主が協力してくれないために、任意の登記申請ができない場合、どうしたらいいのでしょうか?

答えは、登記請求訴訟又は調停を提起する、ということになります。以下に解説します。

 

登記請求訴訟とは

通常の任意での売買による所有権移転登記の申請で必ず必要になるのは、売主の登記申請意思です。これは、売主の実印を押印した委任状という形で登記所に提出することになります。

売買契約はしたけれども、売主が、買主名義への所有権移転登記申請に協力しない(=登記申請意思がない)場合は、売主に対して訴訟を提起して、勝訴判決により売主の登記申請意思を擬制することにより、登記が可能となります。

すなわち、判決の主文には、「被告は、原告に対して、別紙物件目録記載の不動産につき、令和●年●月●日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ」と記載されることを求めることとなります。

この判決が、売主の任意での委任状と同じ効力(=登記申請の意思の擬制)を生じるものとなる訳です。

 

判決による登記申請の添付書類と名変登記

上記のように、判決により任意の委任状の取得は省略できるのですが、登記申請に必要な他の添付書類である権利証や印鑑証明書は、売主から貰わないといけないのでしょうか。

答えは、「いいえ」です。

判決により所有権移転登記申請をする場合は、売主(=登記義務者)の印鑑証明書や対象物件の権利証の添付は省略することができます。

まずは、登記請求訴訟の勝訴判決を取ることを考えておけばいいということになります。

 

ただし、要注意なのは、所有権移転登記の前提となる売主(登記義務者)の住所、氏名の変更登記は省略ができないということです。

住民票や戸籍の附票が市役所に保管されていて、登記上の住所から変遷を取れる場合は特に問題なく住所変更登記を申請することができます。この申請は、買主(登記権利者)が、売主(登記義務者)に代位して、買主の単独申請にて行うことができます。

しかし、市役所での保存期間が満了していて住民票や附票が廃棄されて存在しない場合は、売主(登記義務者)から、実印を押印した上申書を取得する必要が生じます。

 

ただ単に判決を取っただけでは、登記が入らないという恐ろしい事態も想定されますから、この住所、氏名変更の必要性については、訴訟提起前に司法書士に相談して、十分検討しておく必要があります。

 

登記請求訴訟の勝訴の要件(要件事実)

売買による所有権移転登記を請求する訴訟で、訴状に記載する勝訴のための最低限必要なの事実の主張(要件事実)については、いくつかのパターンがあります。

それは、①売買契約をしたことを主張する(債権的登記請求権を主張)、②買主に所有権があることを主張する(物権的登記請求権を主張)、③所有権が売主から買主に移転したことを主張する(物権変動的登記請求権を主張)となります。

ただ、上記の①~③については、それほど大きな違いは生じません。以下に、要件事実を記載します。

① 債権的登記請求権の場合

   売主と買主が売買契約を締結したこと

② 物権的登記請求権の場合

   ⅰ 買主が本件土地を所有していること

   ⅱ 売主が本件土地の所有権登記を有していること

   (※ⅰを売主が争う場合、買主は③と同じ要件事実を主張することとなる)

③ 物件変動的登記請求権の場合

   ⅰ 売主が本件土地をもと所有していたこと

   ⅱ 売主と買主が売買契約を締結したこと

 

要件事実の判断は専門的な事項となりますので、弊所の司法書士にご相談ください。

 

登記請求訴訟と司法書士の訴訟業務

簡裁訴訟代理業務として対応

司法書士には、140万円以内の民事訴訟について、弁護士と全く同様の訴訟代理権があります。

登記請求訴訟の対象物件の固定資産税上の評価額が140万円以内の場合は、司法書士による訴訟代理が可能です。

ただし、土地については、訴額の計算上1/2を乗じるというルールがあるため、評価額が280万円のものまで司法書士の代理対応が可能です。

 

注意点としては、不動産に関する訴訟については、被告による申立てがある場合は地方裁判所に移送されてしまうので、司法書士では代理ができなくなる点です。

その場合は、以下に紹介する本人訴訟支援によるサポートが可能です。

 

本人訴訟支援業務として対応

司法書士には、裁判所に提出するあらゆる書類を作成する権限があります。この書類作成権限には、上記のような金額の制限は一切ありません。

法廷にはご本人様自らが立ち裁判官とやり取りをするけれども、書類作成やアドバイスという形で専門家のサポートを受けたいという場合、司法書士の本人訴訟支援が最適です。

本人訴訟支援は、弁護士に訴訟代理を依頼する場合よりも相当に費用が安く済むことが最大のメリットです。(詳しくはこちら

 

売買契約書が書面で存在するなど書面の証拠がしっかり揃っている場合、訴訟というのはほとんど書面だけで決着がついていきます。そういった訴訟は本人訴訟に向いていると言えます。

(複雑な証人尋問が必要な訴訟は、本人訴訟には向いていないとも言えます。)

司法書士には、150年間、本人訴訟を支援してきた実績がありますから、まずはご相談ください。

 

以上、登記請求訴訟と判決による登記について解説しました。

登記請求訴訟の簡易裁判所での代理や本人訴訟支援、判決による登記申請については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。

 

 

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