今回は、新株の発行によらないで資本金の額を増加(増資)させる登記について解説します。
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資本金を増加(増資)させる必要性とその方法
株式会社を経営していると会社の資本金を増額させる必要が生じる場合があります。
経営上必要な許認可(建設業許可や労働者派遣業や旅行業など)を受けるために、一定の資本金額をクリアする必要があったり、与信や融資のために一定の資本金額が必要となったりします。
資本金を増加させる方法の一つに、募集株式の発行等(新株発行)による増資をする方法があります。
新株を発行すると、資本金を増加させ、さらに会社の資金調達を行うことにもなりますので、新株を発行することが理にかなっている場合も多いでしょう。
一方で、新株を発行せずに、資本金の額を増加させた方が合理的な場合もあります。具体的には、剰余金や準備金を資本金に組み入れをする方法となります。
その他資本剰余金又はその他利益剰余金の資本組入れ
概要と手続き
株式会社は、株主総会の普通決議を経ることにより、その他資本剰余金やその他利益剰余金を減少させ、その分を資本金に組み入れて増加させることができます。
その他資本剰余金とは、資本金・資本準備金を取り崩して差損益が出た場合や、自社株式の処分で差損益が出た場合など、資本取引により剰余金が生じた場合に計上されるものになります。
その他利益剰余金とは、簡単に言うと、事業活動によって得た利益から利益準備金を除いた部分のことになります。
登記申請の添付書類
その他剰余金の資本組入れの登記申請をして資本金の額を増加させる場合の添付書類は、以下のとおりとなります。
・株主総会議事録
・減少に係るその他資本剰余金又はその他利益剰余金の額が計上されていたことを証する書面
・司法書士への委任状
登録免許税
登記に必要な登録免許税は、増加する資本金の額の0.7%(最低3万円)となります。
資本準備金又は利益準備金の資本組入れ
概要と手続き
株式会社は、株主総会の普通決議を経ることにより、資本準備金や利益準備金を減少させ、その一部又は全部を資本金に組み入れて増加させることができます。
※ 資本準備金とは、新株を発行した際に計上する等により生じるもので、利益準備金とは、配当を行う際に積み立てを行う等により計上されるものです。
その他剰余金の場合と異なり、減少する準備金の全部を資本金とする場合及び定時株主総会において欠損(赤字)の補てんをする場合を除き、債権者保護のための公告及び催告をする必要がありますので要注意です。(この債権者保護手続きは、効力発生要件です。)
なお、準備金の減少と同時に、新株を発行して準備金を増加させた結果、準備金の額が減らない場合には、株主総会決議は不要で取締役の決定又は取締役会の決議により、準備金の減少を行うことができます。
登記申請の添付書類
準備金の資本組入れの登記申請をして資本金の額を増加させる場合の添付書類は、以下のとおりとなります。
なお、上記の準備金の減少に係る債権者保護手続きに関する書類の添付は不要となっています。
・株主総会議事録(ただし、上記のなお書きに当たる場合は、取締役の決定書又は取締役会議事録)
・減少に係る資本準備金又は利益準備金の額が計上されていたことを証する書面
・効力発生日を変更した場合は、取締役の過半数の一致を証する書面又は取締役会議事録
・司法書士への委任状
登録免許税
登記に必要な登録免許税は、増加する資本金の額の0.7%(最低3万円)となります。
その他剰余金や準備金の資本組み入れによる、資本金の増額の変更登記は、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。