今回は、株式会社のみなし解散による法定清算人の就任と、株主総会による法定清算人の絞り込み選任について解説します。
このページの目次
株式会社の解散とは
株式会社は、以下の事由が生じたときに解散します。
1.定款で定めた存続期間の満了
2.定款で定めた解散の事由の発生
3.株主総会の決議(特別決議)
4.合併(消滅会社となる場合)
5.破産手続開始の決定
6.解散を命ずる裁判
解散をすると、その株式会社は、清算会社となります。清算会社は、残余財産を売却などして換価し、債権者に弁済したり、株主に配当したりする清算手続きを行い、最後に清算結了の登記をして、清算が完了します。
清算結了をすると会社の法人格が消滅します。つまり、解散=会社の消滅ではありませんので、ご注意ください。
株式会社のみなし解散とは
株式会社に関する登記を最後にしてから12年を経過した場合、いつの間にかその会社が解散したものと法的にみなされ、会社の登記簿に解散の登記がされていることがあります。これを「みなし解散」といいます。
この「みなし解散」は、次のようなステップを踏んで、登記官の職権により登記されます。
まず、官報に、事業を廃止していない旨の届出を2か月以内にすべき旨の公告が掲載されます。
その後、管轄の法務局から当該株式会社に対して、上記の公告がなされた旨の通知がされます。
そして、2ヶ月を経過しても対象会社からの届出がなければ、その2か月の期間の満了時に、会社は解散されたものとみなされ、その後、登記官の職権により解散登記がなされます。
清算人の就任
解散により株式会社が清算会社となるのは、前述したとおりですが、取締役という役職は清算会社にはなく、清算人という役職が取締役に相当するものになります。
清算人には、以下の者が就任します。
1.定款で定める者
2.株主総会の決議によって選任された者
3.上記1、2の者がいない場合は、取締役
4.上記1~3の者がいないときは、利害関係人等の申立てにより、裁判所が清算人を選任する。
上記のうち、3によって、既存の取締役が、そのままスライドして清算人に就任した場合を「法定清算人」といいます。
法定清算人の絞り込み選任
株式会社が、みなし解散となると、自動的に法定清算人が就任することとなります。
そうすると、その会社としては、既存の取締役のうち、清算手続きには必要ではない者が、法定清算人に就任してしまうことがあります。
そのような場合には、清算人の絞り込み選任が可能です。
例えば、対象会社について、定款には、清算人及び代表清算人に関する規定は特にないため、元々取締役であったA及びBが法定清算人となって、元代表取締役のAが法定代表清算人となっていたものとします。
その後、対象会社の臨時株主総会で、清算人を代表であるAのみに絞り込む選任決議をすれば、法定清算人となっているBについては、辞任届の添付なくして退任登記が可能であるものと考えられます。
これについては、会社法478条1項一号のかっこ書きから、株主総会で清算人を清算した場合、選任されなかった法定清算人は当然に退任するものと思われます。
第四百七十八条 次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者
なお、登記研究813にも同様の見解があります。(神﨑満治郎記事)
以上、株式会社のみなし清算と、法定清算人の絞り込み選任について、解説しました。
解散や清算結了の手続き・登記については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。