今回は、未登記建物の売却のために必要となる遺産分割協議、建物表題登記、所有権保存登記について解説します。
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想定事例~祖父が建築した未登記建物の売却~
Q:亡くなった祖父が40年前に建築した建物を売却したいと思っています。売却したい建物は登記されていない未登記の状態となっていますが、売却するにはどうしたらいいでしょうか?
祖父の相続人としては、私と母と従兄弟の3人になります。
A:未登記の建物を売却するためには、表題登記を申請してその建物の登記を起こして、次に保存登記を申請して、現在の所有者(相続人)に所有権の登記名義を入れるという、売却の事前準備となる登記をしておく必要があります。
まずは、遺産分割協議を行い、祖父の方が建築された建物を取得する相続人を決めましょう。
通常、建物を取得する相続人が決まったら、その方の名義で表題登記を申請して登記簿を起こして、次に保存登記を申請して所有権登記名義人となって頂く、という流れになります。
未登記建物を売却するために必要な手続き
建物を売却したいけれど、登記されていない未登記の状態であるということが、しばしば起こります。
不動産を売買する際には、通常、登記を買主名義とするために所有権移転登記を申請します。
なぜなら、買主が登記名義を取得できなければ完全な所有権を得たとは言えず、売主の二重譲渡などにより買った不動産の所有権を失うリスクがあるためです。
ですから、未登記建物を売却するためには、対象建物の登記を起こして現在の所有者である売主の所有権登記名義が入っている状態に準備しておく必要があります。
故人が建築した建物の表題登記
未登記建物について、新たに登記簿(登記記録)を起こす登記のことを「表題登記」といいます。
表題登記を申請すると、建物の種類、構造、床面積などの物理的現況と表題所有者などを表す登記記録の表題部が登記所において作成されます。
この表題登記は、建築主である祖父(被相続人)の名義で起こしてもいいですし、相続人の名義で起こすこともできます。
表題登記などの表示登記については、土地家屋調査士の専門分野となります。
(※弊所の場合、懇意にしている土地家屋調査士と連携して対応しております。)
遺産分割協議と所有権保存登記
表題登記を申請すると新たな登記簿が起きますが、所有権の登記名義人が存在しない状態となります。
そこで、所有権の登記名義人を入れる「所有権保存登記」を申請することとなります。
保存登記をすることにより、対抗力や所有権の推定力が備わり、所有者は法的に完全な所有権を得ます。
保存登記は、表題部所有者やその相続人などから申請することが可能です。
今回の想定事例では、
①被相続人名義で表題登記を申請し相続人名義で保存登記をする、こともできますし、
②相続人名義で表題登記を申請し表題所有者となった相続人が保存登記を申請する、ということもできます。
いずれにせよ、戸籍を調査取得して相続人を確定し、次に祖父(被相続人)の相続人の間で遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成し、対象建物を取得する所有者を決める必要があります。
もちろん、法定相続人全員による共有で登記することも可能ではありますが、共有登記は後日の紛争リスクが高まったり売却が困難になるなどデメリットが多いため、可能な限り遺産分割協議により、取得する相続人を決めた方がいいでしょう。
遺産分割協議書の作成や所有権保存登記、建物の表題登記については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。
(表題登記については、土地家屋調査士と連携して対応します。)