民事信託(家族のための信託)

民事信託(家族信託)とは

信託といえば、大多数の方が思い浮かべるのは、信託銀行や投資信託といった営利目的で行われているもの(商事信託)ではないでしょうか。

一方で、民事信託というのは、委託者が、家族や親しい知人など(受託者)に自分の財産を託し、その財産から得られる利益を、他の家族など(受益者)が受託者から受け取る仕組みになります。

つまり、委託者が死亡したり認知症になったり等、委託者に何か問題が生じたとしても、受託者が託されている財産を活用して、受益者に利益を分配しその生活を守ることなどができるという点が大きな特徴でありメリットとなります。

 

相続の生前対策としての民事信託

民事信託は、相続の生前対策の新しい手法としても注目されています。理論をご説明するよりも具体例の方が分かりやすいと思いますので、以下に活用例をご紹介していきます。

 

認知症対策としての民事信託

事例①

相談者であるX(76)は、金融資産や不動産など多額の資産を有しているが、高齢で最近は物忘れも度々するようになっているため、認知症になることも危惧され、資産の管理を続けることが難しくなりそうな状況である。また、資産の相続税対策について、税理士に相談し進めていく話になっているところである。

家族は、既に妻は亡くなっているが、近所に住む長男(51)、嫁いだ長女(48)がいる。長男は、Xのことを心配しており、Xの希望に沿った財産の管理をしたいと考えている。

認知症対策としての民事信託

 

成年後見制度の検討

Xが認知症を発症した場合、従来の制度を利用するならば、成年後見人等の選任を申し立てることになります。

成年後見人は、Xの法定代理人として、本人のために財産の管理を行ったり、父の不当な財産流出行為を取り消したりすることができますので、ひとまずは安心ではあります。

しかし、成年後見人には毎月2~5万円の報酬を払う必要があります。

また、成年後見人が付くと、相続税対策として金融機関から借入れをし、新たに建物を新築するといったことはできなくなってしまいます。

民事信託の構成とメリット

委託者をX、受託者を長男、受益者をX、とする。

民事信託の構成とメリット

 

Xの財産を長男に信託しておくことにより、Xが認知症となった後も、長男によって引き続き財産を管理したり処分したりすることができ、Xは受益者としてその財産から生活費などを受給することができます。

また、成年後見制度とは異なり、長男が相続税対策として賃貸不動産を新築することも可能となります。

なお、Xの死亡により信託が終了することとし、残余財産を長男と長女に帰属するよう定めることができます。

 

事例②

A(84)は、初期の認知症を発症した妻(76)と共に、その所有する自宅で暮らしている。Aの家族には、長女(55)と長男(52)がおり、妻の介護はAと長女が行っている状態である。

妻は、施設に入るよりも自宅で暮らしたいとの希望をもっており、Aは自分の死後は長女に妻の介護と自宅の管理、妻の認知症が悪化し施設に入居する場合の自宅の処分等を任せたいと考えているが、自分の生前に不動産の名義変更をすることにためらいがある。

相続の生前対策としての民事信託

 

民事信託を利用しない場合

Aが死亡した後には、妻と長女と長男で遺産分割協議をし、自宅等の遺産の帰属を決めることとなります。ただし、妻が認知症であるため、成年後見人等を選任し代わって協議してもらう必要があります。

妻の後見人は、法定相続分である1/2以上の遺産を取得しなければ遺産分割には応じないと考えられますから、柔軟な遺産分けが難しくなるおそれがあります。

また、妻は認知症であることから、妻自身に遺産を相続させると問題が生じます。

民事信託の構成とメリット

委託者をA、受託者を長女、受益者を妻、受益者代理人を長男、とする遺言による信託を行います。

民事信託を利用しない場合

 

遺言による信託とすることにより、Aの死亡後に初めて信託の効力が生じますので、生前に不動産の名義変更をしなくても、信託を設定できます。また、遺言という単独行為によるため、信託の内容を一部の者に内密としたい場合に、メリットがあります。

上記のような遺産分割の必要もなく、妻の生きている間は、長女が信託された自宅に母を住まわせたり、信託された財産から生活費を支出したりすることとなり、Aも安心です。

また、妻を施設に入れることとなった場合は、長女が自宅を処分し費用を捻出することもできます。

なお、妻を受益者とすることで、Aから妻への相続税が発生する点には留意が必要です。

 

民事信託の利用について

上記の2事例については、民事信託による解決に十分なメリットがあり、適用をお勧めできるケースなのですが、民事信託が上手くマッチせず、成年後見や生前贈与など、既存の制度で十分な解決が図れるケースも多々あります。

民事信託を利用した方が良いケースなのかどうかの判断は専門的ですので、まずは当事務所にお気軽にご相談下されば、司法書士が対応致します。

 

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