今回は、間違った住所で登記がされてしまった場合の対応、更正登記申請や登記官の過誤による職権更正などについて解説します。
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想定事例~間違った住所で誤って登記がされてしまった場合の対応~
Q:Aと申します。昨年のことですが、父がなくなったため、ある司法書士さんに私を相続人とする相続登記の申請をお願いしました。
登記が完了してしばらくした後に気が付いたのですが、登記事項証明書を見てみると、私の住所が間違っているのです。
正しくは、一丁目1番1-101号なのですが、登記には一丁目1番1-110号と記載されています。
おかしいと思って、法務局に聞いてみたのですが、登記申請書の相続人である私の住所が110号と間違っているため、登記官の職権では直せないというのです。
どうすれば正しい住所に修正できるのでしょうか。
(※ご相談の内容は想定です。)
A:通常、申請書の住所が間違っている場合は、法務局の審査の段階で補正となり、正しい住所で登記されるのですが、登記官も人間ですから、住所が間違っていることに気が付かずに、そのまま登記されてしまうことが稀にあります。
間違った登記がされたことについて、完全に法務局側のミスである場合には、登記官の職権で修正してくれるのですが、今回のケースは、登記申請書が間違っているため、一義的には申請した司法書士のミスとされてしまいますので、登記官の職権では修正してくれないでしょう。
ですので、誤った登記を直す「更正登記」を申請する必要があり、これにより正しい住所に登記されることとなります。
登記官の過誤による職権更正~法務局はミスを認めるのか?
不動産登記法第67条第2項には、次のように規定されています。
登記官は、・・・登記の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、・・・登記の更正をしなければならない。・・・
つまり、登記をする上で、登記官のミスで間違った登記をした場合は、登記官の職権で更正登記をする義務があるということです。
しかしながら、この「登記官の過誤」というのが、簡単にには認められない傾向にあるようです。
例えば、登記簿をコンピューター化する際の移記の作業の際に、間違って入力がされたような場合や、申請書類は正しいのに登記記録への書入れだけが間違っているのが明らかな場合などには、法務局側のミスであることが認められて、登記官の過誤による職権更正がされるようです。
けれども、今回のご相談のケースでは、相続登記の申請書の住所が間違っている状況です。
添付書類の住民票は正しい住所が記載されているのだから、法務局のチェックミスであるような気もしますが、申請書が間違っている場合は、あくまで申請した司法書士のミスであるとして、登記官の過誤、というものは認められない運用のようです。
ですので、あくまで依頼者側からの、更正登記の申請をしなければ、登記は修正されないこととなります。
更正登記とは
更正登記とは、申請され書入れがされた登記について、当初から誤りがあり、それを訂正する登記のことを言います。
一方で、変更登記というのは、申請され書入れがされた登記自体は正しいものだったけれども、後日、登記事項について変更が生じた場合にする登記のことを言います。
今回のご相談のケースでは、当初から住所が誤っていたため、更正登記を申請するケースとなります。
更正登記申請書には、錯誤を証する登記原因証明情報を添付することになります。
具体的には、登記が申請された当時の住所がわかる住民票等を添付します。
また、更正登記には、登録免許税もかかってしまいます。
具体的には、不動産1個につき、1000円を納めることとなります。これは、依頼者側で負担するものですが、司法書士のミスの場合は、司法書士が負担するケースもあるでしょう。
以上、誤った登記がされた場合の更正登記や登記官の過誤による職権更正などについて解説しました。
誤った登記による更正登記や変更登記などについては、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。