今回は、土地や建物を相続させる旨の遺言があっても、相続による名義変更の登記を急ぐ必要があるので解説します。
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想定事例~相続させる旨の遺言による登記は急ぐべきか~
Q:Aと申します。1週間前に、私の夫Bが亡くなりました。相続人は、私と長女Cの2人になります。
夫の遺産は、預貯金500万円と自宅の土地建物のみになりますが、夫は、全財産を妻に相続させる旨の遺言を残していました。
私は、急いで何か手続を取った方がいいのでしょうか?
(ご相談内容は、想定です。)
A:相続させる旨の遺言があったとしても、直ちに登記をしておいた方がよいでしょう。なぜなら、長女の債権者からの差押えが入ってしまうと所有権の一部を失う可能性があるからです。すぐに司法書士に依頼されることをお勧めします。
相続させる旨の遺言と対抗関係
令和元年7月1日の改正民法施行前
令和元年7月1日施行の民法改正以前においては、不動産を「相続させる」旨の遺言があれば、登記をしなくてもその不動産を相続したことを第三者に対抗(=主張)できるとされていました。
上記のご相談の例で言いますと、夫Bの死後に、長女Cの債権者が、自宅不動産の法定相続分による相続登記を代位で行い、長女Cの持分2分の1を差し押さえたとしても、妻Aは登記がなくても自宅不動産の所有権全部を相続したことを債権者に対抗(=主張)できていたのです。
つまり、「相続させる」旨の遺言がある場合、その相続登記の申請をする緊急性が低かったのです。
令和元年7月1日の改正民法施行後
しかし、令和元年7月1日の民法改正以後は、「相続させる」旨の遺言があったとしても、自らの法定相続分を超える部分の取得について、登記がなければ第三者に対抗(=主張)できないこととなりました。
上記のご相談の例で言いますと、夫Bの死後に、長女Cの債権者が、自宅不動産の法定相続分による相続登記を代位で行い、長女Cの持分2分の1を差し押さえた場合、遺言による相続登記をしていなかった妻Aは、自宅の2分の1を失う可能性があるのです。
もし、妻Aが、長女Cの債権者よりも早く、遺言による相続登記をしていれば、完全な所有権を確保できていました。
つまり、自分の法定相続分を超える遺産を取得した場合、その超える部分の取得は他の権利者との競争関係になりますから、いち早く対抗要件である登記などを備えておかなれば、権利を失うリスクがあるのです。
故人が遺言を残してくれていたとしても、その相続登記を素早く行わなければ、せっかくの故人の想いが実現しないこともあり得ます。相続登記はお早めに!
遺言書の作成や遺言による相続登記の申請は、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。