滞納している借金は破産手続から除外できるのか?免責不許可と非免責債権について。

今回は、貸したお金の借主が破産手続きを取る場合、その貸金債権を破産手続きから除外できるのか、免責不許可事由と非免責債権について解説します。

 

想定事例~未返済の借金と破産手続きからの除外~

Q:Aと申します。私は、2年前に知人のBさんに頼まれて、50万円を貸してあげました。その時は、半年で返すという話だったのですが、返済はされることなく今日に至っています。

ある事情でお金が必要になったことから、Bさんに貸したお金を返して欲しいと言ったところ、Bさんは破産手続きを検討しているので、返せないという返答でした。

 

借金を返さないというスタンスが許せず、私が詰め寄ると、Bさんは私からの借金は破産手続きから除外するからと言いました。

それを聞いて、私も一旦は納得しその場は収まったのですが、そんなことは法的に可能なのでしょうか?

(相談内容は、想定となります。)

 

A:まず、破産による免責の手続きにおいて、虚偽の債権者名簿(債権者一覧表を含む。)を提出した場合、免責が得られない、すなわち借金が消滅しないリスクが生じます。

また、上記の虚偽の債権者名簿の提出には該当しなかったとしても、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権に関しては、非免責債権となり、借金は残ったままとなります。

ただし、その借金の債権者が破産手続開始の決定があったことを知っていた場合は、その借金は原則どおり免責となります。

 

ご相談の件では、Aさんの借金を破産手続きから除外することはできなくはないですが、Aさんが破産開始を知ることにより免責となり、返済を求められなくなるリスクはあるということになります。さらに、Bさんにとっては破産全体が免責不許可となるリスクさえあります。

 

破産の免責不許可事由

破産手続きにおいては、借金を無くしてもらうためには、免責許可の申立てというものを行う必要があります。

この免責許可には、不許可となる事由が規定されています。以下に該当する場合には、破産しても借金がなくならないので要注意です。

破産法252条より
 
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
 
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
 
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
 
四 浪費又は博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
 
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
 
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
 
七 虚偽の債権者名簿(債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。)を提出したこと。
 
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
 
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
 
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
 
 

破産の免責における非免責債権

借金を消滅させる免責の許可が降りたとしても、例外的に消滅しない債権があります。これを非免責債権と言います。

非免責債権は、以下の7つとなります。

破産法253条より

一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
 
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
 
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
 
四 次に掲げる義務に係る請求権
 イ 民法の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
 ロ 民法の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
 ハ 民法の規定による子の監護に関する義務
 ニ 民法の規定による扶養の義務
 ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
 
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
 
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
 
七 罰金等の請求権
 
 
せっかく破産手続きを取ったとしても、正しく免責を得られないのでは意味がありません。
 
破産手続開始の申立てや免責許可の申立ての手続きについては、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。
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