今回は、相続が発生した不動産の売却と節税スキームについて、解説したいと思います。
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想定事例(相続手続きと不動産の売却)
Q:Xと申します。私の母が先月に亡くなりました。隣県に、母名義の空き家がありますが、20年以上人は住んでいませんでしたので、売却をしたいと思っています。売却するには、どの様な手続きを行えばいいのでしょうか?
なお、私にはYという兄が一人おり、父はずっと以前に既に他界しております。兄は、ここのところお金に困っているようなので、売却には賛成しています。
この空き家は、時価評価額で1,000万円で、これ以外には遺産はありません。また、この空き家を購入した際の、契約書や領収書などは残っておらず、購入価格は不明です。
(ご相談の内容は、想定になります)
A:まずは、お母様名義の不動産の相続人を決める必要があります。その相続人が売却代金を受け取ることになるので、売却代金を誰が受け取りたいか、というところを基準にして、遺産分割による相続人を決めればよいでしょう。
法定相続分どおりに相続登記をして売却すれば、XさんとYさんが半分ずつ売却代金を受け取りますので、それでいいのではないでしょうか。
不動産売却と譲渡所得税
不動産を売却すると譲渡所得税という税金が発生する場合があります。不動産を購入し売却したことにより、生じた利益に対して課税するものです。
ですので、譲渡所得の計算の際には、売却して受け取った金額から、その不動産を購入した際の購入価格を差し引いて計算することができます。
簡単に言うと、3,000万円で買った不動産を3,500万円で売却した場合、差額の500万が課税対象になるということです。
今回のケースでは、空き家の購入価格が不明なので、購入価格の差し引きができません。そのような場合は、売却価格の5%を差し引くことになります。
よって、譲渡所得税は、 (1,000万円-50万円)*20%=190万円 となります。(概算の金額です)
遺産分割協議により空き家を相続した者が、不動産の売主になり、売却代金を受け取った上で譲渡所得税を支払うことになります。
代償分割をすれば得なのか損なのか
では、誰が空き家の相続人となれば、税務上有利になるのでしょうか。
今回のケースでは、遺産分割の方法は、大きく分けて3つあると思われます。
①Yさんが空き家を相続する代わりに、Xさんに対して代償として500万円支払う。
②Xさんが空き家を相続する代わりに、Yさんに対して代償として500万円支払う。
③法定相続分どおりに、1/2Xさん、1/2Yさんで相続する。
①と②は、代償分割という遺産分割の方法になります。(遺産分割の方法については、こちら)この場合、500万円という金銭に動きがありますが、課税の対象とはなりません。
また、相続税についても、基礎控除の範囲内ですので、課税はありません。
つまり、①②③のどの方法で相続して売却をしたとしても、納税するトータルの金額は変わらないということになります。
各相続人の手取りはいくらになるのか
結局のところ、誰がいくら現金を受け取るか、という観点で相続人を決めればいいということになります。計算すると以下のようになります。
①Xさん手取り500万円、Yさん手取り310万円
②Xさん手取り310万円、Yさん手取り500万円
③Xさん手取り405万円、Yさん手取り405万円
結局のところ、法定相続分どおりに相続登記して、売却するのが公平だということですね。
空き家の相続手続きや売却については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。節税スキームについては提携の税理士と、売却については提携の不動産業者と協力して行います。