今回は、仮登記根抵当権の元本確定と、確定債務不存在による抹消の登記を判決により行う手続きについて、解説致します。
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仮登記根抵当権の抹消について
Q:私は、30代の頃から自営業を営んでいるため、自宅の土地建物には、複数の抵当権や根抵当権が設定されています。
ある時、自宅の登記簿を見ていると、身に覚えのない仮登記根抵当権が設定されているのを見つけました。
この仮登記根抵当権者はXとなっていますが、Xから金を借りた覚えはありません。この仮登記根抵当権を抹消して欲しいのですが、できますか?
なお、Xは登記手続きに協力するつもりはないと言ってきています。
(※ご相談の内容は、想定になります。)
A:本当にXから金を借りたことがないのであれば、根抵当権の被担保債権が存在しないことになります。
まず、仮登記根抵当権の元本請求を行い、元本を確定させます。そうすることで、仮登記根抵当権については、確定債務不存在を原因として抹消することが可能になります。
Xが登記手続きに協力しない場合は、登記手続請求訴訟を提起して判決を得ることで、Aさん単独で登記申請をすることができます。
仮登記根抵当権の元本確定
根抵当権は、設定されている債権の範囲内の被担保債務について、設定されている極度額まで、競売時における優先弁済権を持つ担保権です。
つまり、元本確定前の根抵当権は、設定された枠内で被担保債権が増えたり減ったりしているため、被担保債権が全く無くなったとしても、それだけでは、その根抵当権の消滅原因とはなりません。
一方、元本が確定した根抵当権は、被担保債権の増減がもう起きませんので、被担保債権について弁済されれば、その根抵当権は消滅します。
では、元本確定時に、被担保債権が全くなかった場合、どうなるのでしょうか。
被担保債権のない抵当権というのがあり得ないのと同じで、被担保債権のない確定根抵当権というのも、また、存在しえません。
この場合、原因を確定債務不存在を原因として、根抵当権の抹消登記をすることが可能です。
では、根抵当権が仮登記であった場合はどうなるのでしょうか?
その仮登記根抵当権が、1号仮登記と呼ばれる添付書類の不足があるためにされた仮登記なのであれば、元本確定登記をすることが可能です。
(平成14年5月30日民二)
今回のケースでは、元本を確定させるために、確定請求を内容証明郵便にて行うこととなりました。
判決による登記
登記申請は、原則として、申請した登記によって直接に利益を受ける者(登記権利者)と直接に不利益を受ける者(登記義務者)の双方が共同して行うものになります。
しかし、今回のケースのように、仮登記根抵当権者が登記申請に協力してくれない場合は、判決による登記申請を検討することになります。
登記されている権利が何らかの原因により消滅したような場合には、その権利者は抹消登記申請に協力する義務があります。
にもかかわらず、抹消登記に協力してくれない場合は、訴訟を提起し、判決を得ることにより、登記義務者の意思表示を擬制することが可能になります。
そうすることで、登記権利者(今回のケースで言うと相談者さん)は、単独で登記申請を行うことができるのです。
なお、判決は、登記手続き自体を命じる確定した給付判決である必要があります。
今回のケースでは、元本確定の登記と仮登記根抵当権の抹消登記の2つの登記手続きについて、判決を求めることとなりました。
根抵当権の設定や抹消、仮登記の設定や抹消、判決による登記申請については、豊中司法書士ふじた事務所にご相談下さい。