今回は、不動産について、登記をしないといけない理由は何なのか?という素朴な疑問にお答えしたいと思います。
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不動産登記をしなければならない理由
なぜ不動産登記をしないといけないのか、登記をする理由は何なのか?という疑問に対する答えは、権利登記と表示登記で異なるものとなります。
表示登記をしなければならない理由
表示登記というのは、登記記録の表題部に関する登記です。簡単に言うと、土地や建物の物理的な現況を表すものです。
土地であれば、所在、地番、地目、地積が、建物では、所在、家屋番号、種類、構造、床面積が登記事項になります。
また、表示登記においては、登記所に関連する図面が備え付けられ、土地の場合は公図や地積測量図、建物の場合は建物図面があります。
この表示登記については、歴史的な経緯があり、徴税目的のために整備された旧土地台帳というものから始まっています。
そのため、現在の不動産登記法において、表示の登記は法律的な義務とされており、登記を懈怠すると、理論上は過料の制裁を受ける可能性もあります。
ですから、表示の登記をしなければいけない理由は、法律上の義務であるから、という答えになります。
なお、表示登記の中には、分筆登記のように法律上の義務がないものもありますが、一つの土地を二つに分けて異なる所有者にしようとする時などは、事実上必須の登記となります。
権利登記をしなければならない理由
権利登記というのは、登記記録の権利部に関する登記です。
登記記録の権利部は、甲区と乙区に分かれます。
甲区には、所有権に関する登記がなされ、乙区には、抵当権や地上権などの所有権以外に関する権利について登記がなされます。
上記のとおり表示登記には法律上の義務がありますが、一方で権利登記には、登記申請をしなければならない法律上の義務はありません。
では、なぜ権利の登記を申請する必要があるのでしょうか?
その理由を一言で言うと、第三者対抗要件を取得しておくため、ということになります。
もう少し具体的に説明します。
民法には、不動産に関する物件の得喪及び変更は、登記をしなければ第三者に対抗できない、と規定されています。
例えば、Aが建物をBに売却したとします。けれども、Bが登記をせずに放置したため、Aが建物の名義が自分のままであることを利用して、Cにもその建物を売り、Cは登記をしたとします。
このケースが典型的な不動産の二重譲渡で、建物の所有権は、先に登記を備えたCが取得することとなります。
Bは、Cより先に建物を購入したにもかかわらず、登記をしなかったため、それを第三者であるCに対抗(=主張)できないのです。
もっと分かりやすく言うとすれば、不動産を購入したとしても、登記をしなければ完全な所有権を取得したとは言えないのです。
もちろん、抵当権や地上権についても、上記のような「登記早いもの勝ち」のルールが当てはまります。
抵当権は、順位1番と2番では、その意味が全く異なります。競売になった際には、1番抵当権者が優先して弁済を受けるからです。
ですので、銀行などの金融機関が融資を行う時は、融資の実行日の当日に、必ず抵当権等の設定登記を申請し、順位を確保します。
相続登記をしなければならない理由
相続登記は、権利登記の1つですので、やはり法律上の義務はありません。
しかし、次のような理由から、相続登記についても、登記申請を放置せずに行っておくことが極めて重要になります。
まず、相続登記をせずに所有権の登記を放置してしまうと、2代、3代と代が進むにつれ、相続人の人数がネズミ算式に増えていきます。
そうなると、不動産を売却したいなどの理由から相続登記をしようとしても、相続人全員の合意である遺産分割協議をまとめることが相当に困難になってしまいます。
次に、遺産分割や「相続させる」旨の遺言や相続分の指定により、法定相続分よりも多く遺産を取得した場合、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないという点が理由となります。
例えば、父が死亡して相続人が妻と長男というケースの場合に、遺産分割協議で妻が全ての遺産を相続したとします。
もし、妻が相続登記をせずに放置したために、長男が自分の法定相続分に当たる持分を第三者に譲渡してその登記をしてしまった場合、妻はその第三者に自分の持分であることを対抗(=主張)できません。
上記の売買の例と同じく、「登記早い者勝ち」のルールが適用されるのです。
以上の説明でお分かり頂けたかとは思いますが、権利の登記は、自分の権利を保全するためには、必ずしておく必要があるものなのです。
不動産の売買や贈与、相続、抵当権や根抵当権などの担保権の設定をする際の登記申請については、豊中司法書士ふじた事務所にお任せ下さい。