今回は、土地建物を相続させる、といったあいまいな内容の遺言で、相続登記ができるかどうかについて解説します。
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想定事例~あいまいな遺言による相続登記~
Q:初めまして、Aと申します。先月末に、父Bが亡くなりました。父は自筆での遺言を残しており、そこには「土地建物をAに相続させる。」と書かれていました。父が所有している土地建物といえば、豊中市の自宅のみなのですが、これで相続登記は可能でしょうか?
A:そうですね、お父様の所有される土地建物が自宅だけなのであれば、名寄帳という書類を添付することによって、登記は可能と考えます。事前に登記官と協議しておく必要がありそうなので、弊所にお任せください。
自筆証書遺言を作成する際の注意点~物件の特定~
自筆証書遺言を作成する際には、民法に決められた形式的な要件を満たす必要があります。
・全文、日付、氏名を自署し、印を押すこと。
・相続財産について、目録を用いて特定する場合は自署を要せず、目録の毎葉に署名押印する。
次に、相続の対象となる財産の特定についてですが、これは民法上、どのような記載方法にすべきか規定はありません。
ただし、不動産については、相続による所有権移転登記(名義変更)を行う必要があるため、登記に耐え得るレベルで対象物件を特定する必要が生じます。
土地であれば所在、地番、地目、地積で、建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積で特定して対象物件を記載しておくことが望ましいです。
対象物件の特定については、登記簿のコピーなどを目録として添付する方法もありますから、自署に不安がある場合は利用してもいいでしょう。(詳しくはこちら)
「土地建物を相続させる」といったあいまいな遺言での相続登記の方法
今回の想定事例では、「土地建物を相続させる」と記載された遺言で相続登記ができるかどうかが問題なっています。
この記載ぶりは、民法上の遺言の成立要件は満たしているものの、不動産登記上の登記に耐え得る物件特定ができているかどうかが、問題となっている訳です。
想定事例では、遺言者である父Bは、豊中市の自宅以外に不動産を所有していないとのことでした。
つまり、父Bにとっての「土地建物」は自宅に他ならないということになります。
豊中市の名寄帳を取得し、父Bが所有している土地建物を詳細に特定できれば、所有権移転登記も可能となるでしょう。
なお、登記の可否については、登記官によって必要な書類の判断が分かれることも想定されますので、事前協議はしっかりとしておいた方がよろしいかと思います。
遺言書の作成や遺言による相続登記は、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。