定時株主総会と役員の再選重任の登記手続き。決算確定日に要注意!

今回は、定時株主総会と取締役や監査役などの役員の重任登記手続きと、法人税申告の決算確定日との関係について解説します。

想定事例(定時株主総会による役員重任登記)

Q:私の経営している株式会社の法人税の確定申告を依頼した際に、税理士さんから役員の任期が切れるので登記をするように言われたので、お願いできますでしょうか?なお、役員全員を再選し重任させたいです。

弊社の年度末は3月末で、法人税の申告は5月末を予定しています。役員は、私が代表取締役で妻と長男が平取締役で入っていて、私が100%株主です。

必要な書類や印鑑はどうなりますでしょうか?

 

A:法人税の確定申告上の決算確定日に合わせて定時株主総会を開催し、決算承認の件と役員重任の件を決議することとなります。

定款を拝見したところ、代表取締役を株主総会にて選定することとなっています。ですので、定時株主総会に役員全員が出席されれば、押印は代表取締役が議事録に会社実印にて行うことだけで足ります。

 

定時株主総会の開催期限と法人税申告

定時株主総会は、会社法上、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない、と規定されています。(会社法296条)

これだけだと、いつ開催すべきか良く分かりませんが、通常、定時株主総会の開催期限については、定款に詳細な規定があります。

 

中小企業の場合は、ほとんどの会社の定款に、定時株主総会は事業年度の終了後3ヶ月以内に招集する、との規定があります。

ですから、会社法上は、定時株主総会は年度末から3か月以内に開催すればいいとも思えます。

 

しかしながら、会社の法人税の申告との兼ね合いが問題となってきます。

法人税の申告は、原則、事業年度末の翌日から2か月以内が申告期限となっています。

そして、法人税の申告では、決算確定日を記載し申告しなければなりません。ここでいう、決算確定日とは、決算書類を定時株主総会で承認した日となります。

 

ですので、法人税申告の都合上は、定時株主総会を事業年度末から2か月以内に行う必要が生じます。

実際の事例としても、定時株主総会は、年度末から2か月以内に行われることが多いと感じています。

 

法人税の申告後に定時株主総会を開催することはできるのか

とはいっても、法人税の申告が終わった後に、役員重任登記のご依頼を頂くケースがない訳ではありません。

そこで、法人税法上の決算確定日以後に行った定時株主総会が有効かどうか、という論点が生じます。

 

下級審の裁判例にはなりますが、株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく法人税の確定申告も有効であるとしたものがあります。(福岡高裁平成19年6月19日判決)

これによって考えれば、年度末から2か月経過後3ヶ月以内に行った定時株主総会により決算承認と役員重任を議決することも一応可能と考えられます。

けれども、あくまでも法人税法の原則的な考え方は、決算確定日=定時株主総会開催日となります。

 

定時株主総会議事録と役員重任登記の添付書類の省略

取締役会非設置会社においては、取締役の就任の登記をする際には、当該取締役の印鑑証明書を添付することが原則となります。

ただし、例外として、再選の場合は省略ができます。

今回のケースのように、全員再選し重任する場合は、印鑑証明書の添付の心配は必要ありません。

 

次に、代表取締役を選定した議事録に押印した取締役などは、印鑑証明書を添付することが原則となります。(詳しくは商業登記規則61条6項参照)

ただし、例外として、変更前の代表取締役が、会社実印で押印すれば印鑑証明書の添付が省略できます。

今回のケースでは、株主総会議事録に、代表取締役が会社実印で押印すれば、印鑑証明書の添付は一切不要となります。

 

最後に、各取締役の就任承諾書の添付についてですが、重任する取締役が株主総会に出席していて、議事録に席上即座に就任を承諾した旨の記載があれば省略できます。

なお、株主総会議事録には、会社法の原則通りの押印があればよく、重任した役員が押印していなくても構いません。

 

今回の解説は以上になります。重任登記の添付書類の省略については、判断が難しいケースがありますので詳しいことは弊所の司法書士にお尋ねください。

定時株主総会議事録の作成や役員の重任登記申請手続きについては、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。

 

 

 

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