今回は、不動産の所有権登記名義人の住所・氏名の変更登記の義務化について解説します。
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現在の法制度と義務化への経緯
現在の不動産登記法では、所有権登記名義人の住所・氏名が変わった場合の変更登記は、義務ではなく申請は任意となっています。
一方で、不動産を売却したり贈与したりして、所有権移転登記を申請する際には、その前提として必要に応じて住所・氏名の変更登記を申請しなければならない仕組みとなっています。
けれども、そういった売買や贈与などが発生しない限り、住所・氏名が変わったとしても登記をする義務がないため、古い住所・氏名のまま登記が放置されているのが現状です。
これが原因で、東日本大震災の復興事業や通常の公共事業のための用地買収において、土地の所有者の住所や氏名が分からず、買収交渉先の特定が困難となる事例も多く生じています。
そこで、所有者不明土地問題の解消等のために令和3年に法改正がなされ、相続登記の義務化とセットで住所・氏名の変更登記も義務化されました。
(相続登記の義務化についてはこちらをご覧ください)
住所・氏名の変更登記の義務化等について
住所・氏名の変更登記の義務化
令和3年の通常国会で成立した改正法により制度化した住所変更登記の義務については、次のとおりです。
① 所有権の登記名義人の氏名・名称又は住所に変更があったときは、2年以内にその変更登記を申請しなければならない。
② 上記の義務について、正当な理由がないのに申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。
(過料というのは、前科ではなく、行政罰となります)
この罰則について、どこまで厳格に適用されるのかどうか、実際の運用を注視していくこととなります。
登記所が登記名義人の死亡や住所・氏名の変更を把握する仕組み
上記のように、名義人サイドに対して、変更登記申請を義務化する一方、登記所サイドでも名義人の動きを把握する仕組みが整えられました。
①登記所が住民基本台帳ネットワークシステム(住民票のデータベース)や商業登記システムにアクセスし、一定の場合には、登記官の職権で住所・氏名の変更登記ができることとなりました。
ただし、自然人(法人でない)については、その申し出があるときに限られます。
②登記所が名義人の死亡や住所氏名の変更について把握するために、新たに所有権登記名義人となる者は生年月日等の情報(検索用情報)を登記所に提供することとなりました。
(既存の所有権登記名義人が生年月日等の提供を行うかどうかは任意となります)
登記所は、この検索用情報を使って、住民基本台帳ネットワークシステムにアクセスし、名義人の死亡や住所氏名の変更の有無を把握することとなります。
住所・氏名変更登記の義務化の施行日は
住所変更義務化関係の改正の施行日については、改正後5年以内とされていますから、令和8年までに施行されるものとなります。
住所・氏名の変更登記申請手続きについては、豊中司法書士ふじた事務所にご相談ください。